α1-MGは主に肝臓で産生される低分子の糖蛋白質です。
NAGは全身に存在する糖質分解酵素です。時に近位尿細管上皮細胞に多く存在します。
MG:ミクログロブリン
NAG(N-アセチル-β-D-グルコサミニダ-ゼ)
近位尿細管機能を反映するマーカー
正常ではβ2-MG、α1-MGは低分子のため近位尿細管でほとんど再吸収されます。しかし、近位尿細管が障害される疾患ではこれらの低分子蛋白が尿中で増加されます。また器質的に障害されれば、上皮細胞からNAGが漏れだし尿中に排泄されます。
従ってこれらの低分子蛋白は近位尿細管の障害を早期に反映するマーカーとして有用です。
基準値・分子量
基準値 | 分子量 | 特徴 | |
β2-MG | ≦ 230 μg/L | 11,800 | 酸性尿で変性。
多発性骨髄腫、自己免疫疾患、腎疾患で増加を認める |
α1-MG | M:10.0~21.0
F: 8.3~16.4 |
33,000 | pHに対して安定している |
NAG | ≦ 7.0 U/L | 110,000 | 血清NAGは糸球体を濾過できない |
※β2-MGは、酸性尿で変性し不安定化するので欧米では血清マーカーとしてのみ使用され、尿の測定にはα-MGが用いられています。
β2-MG、α1-MGは濾過されます
"ミクロ"(極小)!!
一方、血清NAGは分子量が大きいため糸球体で濾過されません。したがって、NAGが尿中に排泄されることは近位尿細管障害の器質的障害を示唆します。
上皮細胞がもつNAGが破れて漏れ出てるんだね
多発性骨髄腫で上昇するのは血清β2-MG
多発性骨髄腫では血清β2-MGが増加します。β2-MGは主にリンパ球・単球に豊富に存在します。
形質細胞が腫瘍化し増加するからですね。"血清"β2-MGなので注意しましょう。
疾患によれば血清βミクログロブリンが増加してしまうという点も不安定でα1-ミクログロブリンが近位尿細管のマーカーに向いている理由かもしれません。
透析アミロイドーシス
β2-MGは透析では十分に除去できません。β2-MGがアミロイド蛋白に変性し全身に沈着します。
医師国家試験問題を解いてみよう
【109I57】
58歳の男性.発熱,皮疹および関節痛を主訴に来院した.14日前に急性腰痛症のため自宅近くの診療所で非ステロイド性抗炎症薬を処方され服用していた.2日前から発熱,皮疹および関節痛が出現し増悪してきたため受診した.既往歴に特記すべきことはない.体温37.3℃,脈拍84/分,整.血圧138/86mmHg.全身に紅斑性丘疹を播種状に認める.両側の肩関節,肘関節および膝関節に疼痛と腫脹とを認める.尿所見:蛋白(±),糖(-),潜血(±),沈渣に赤血球1~4/1視野,白血球5~9/1視野.β2-マイクログロブリン54,630μg/L(基準200以下).血液所見:赤血球350万,Hb 10.8g/dL,Ht 32%,白血球9,600(分葉核好中球49%,好酸球24%,好塩基球1%,単球1%,リンパ球25%),血小板34万.血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL,アルブミン3.8g/dL,IgG 1,410mg/dL(基準960~1,960),IgA 200mg/dL(基準110~410),IgE 320IU/mL(基準250未満),尿素窒素24mg/dL,クレアチニン1.6mg/dL,HbA1c 5.4%(基準4.6~6.2).腎生検のPAS染色標本を次に示す.蛍光抗体法では糸球体に免疫グロブリンの沈着を認めない.
診断はどれかa 悪性腎硬化症
b 急性間質性腎炎
c 紫斑病性腎炎
d 糖尿病腎症
e 膜性腎症