てんかんをマスターする【前編】で書いたとおり、てんかんの症候は痙攣だけではない。痙攣以外の発作症状を含めて、てんかんの分類を見ていこう。
分類
てんかんは、部分発作と全般発作に分けられる。大脳皮質ニューロンの局部だけが発火するのが部分発作、全体から発火するのが全般発作である。
部分発作
意識障害のない単純部分発作と意識障害のある複雑部分発作にわかれる。
単純部分発作 | 複雑部分発作 | |
意識障害 | (-) | (+) |
<部分発作> | |
単純部分発作 | 意識障害はない。
運動徴候を有するもの(Jackson発作)、 体性感覚あるいは特殊感覚徴候(ピリピリ感、ピカピカ感など)を伴うもの、 自律神経症状(心窩部不快感、顔面蒼白、発汗、紅潮、立毛、瞳孔散大など) を伴うもの、精神症状を伴うもの |
複雑部分発作 | 意識障害がある。
単純部分発作で始まり意識障害が続くもの、 意識障害で始まるものがある。後者では自動症を伴うものがある |
※Jackson発作:中心前回に始まったてんかん発射が隣接部位に進展波及し、局所痙攣が、体側の顔、上肢、下肢を順に移動(マーチ)していくもの
※ 自動症:口をもぐもぐさせる、舌なめずり、ボタンや衣類をいじる、徘徊など。
全般発作
<全般発作> | |
大発作 | 15~30秒の強直発作から意識障害を呈し、
数分間の律動的な筋収縮の間代発作に入る(強直間代発作)。 全身性かつ対称性の痙攣。 痙攣後昏睡という意識がもうろうとした状態が続く。 |
小発作 | 2~10秒の前兆のない突然の意識障害で、欠神発作ともいう。
すぐに元の状態に戻り、活動を再開する。 うつろな目になり、ものを落としたりするが姿勢は保たれて転倒はしない。 痙攣(-)、小児(特に女児)に好発。過呼吸で誘発されやすい。 |
その他 | 非定型欠神発作、
ミオクロニー発作:新生児から小児期に好発する 脱力発作(失立):脱力が全身に及べば突然ガクッと倒れてしまうことがある。 顔面や頭部の外傷を起こしやすく危険。 |
治療
簡単に発作型から抗てんかん薬の治療を示す。(詳しくは成書やガイドライン参照をすすめる)
第一選択薬 | |
部分発作 | カルバマゼピン |
全般発作 | パルブロ酸 |
ピンポイントの部分発作にはカルバマゼ『ピン』
一種の覚え方だが、ピンポイントの発火である部分発作の治療にはカルバマゼ『ピン』と覚えればよいだろう。
痙攣重積状態の治療
痙攣発作が長時間(概ね30分以上)持続する状態、または発作後に意識を回復しないうちに次の発作が始まる状態を痙攣重積状態という。多くの痙攣は1~2分で収まるが、痙攣重積状態では、死亡率も高く初期治療が重要である。痙攣が長引くと脳損傷が増大することを忘れてはならない。
まず、気道・呼吸・循環を確保した後、抗けいれん薬のジアゼパムの静注を行う。ジアゼパムには呼吸抑制作用があるので気管内挿管を準備してから投与する。ジアゼパムが無効な場合はフェニトイン静注などを考慮する。痙攣が続くようならジアゼパム投与を繰り返すが、入院治療(呼吸管理下で全身麻酔)を考慮する。