なぜか慢性腎不全では低Ca血症をきたすのでしょうか?その鍵はビタミンDの活性化障害にあります。
通常、腎ではビタミンDの活性化が行われています。ビタミンDを直接活性型に変換するのは近位尿細管に存在する1α-水酸化酵素です。活性化とは、25-hydroxy-vitamin D を水酸化(-OH基)して1,25(OH)2-D3にすることを意味します。
慢性腎不全ではビタミンDの活性化障害が起き低Ca血症を生じます。
<活性型ビタミンDの作用>
- 小腸からのCa、Pの吸収を促進
- 骨吸収・骨形成ともに促進し、骨代謝を高める
- 遠位尿細管でのPTHのCa,P再吸収作用と高める
- PTHの分泌を抑制する(Ca濃度上昇のネガティブフィードバックとなるから間接的に抑制)
また慢性腎不全ではGFRの低下により高P血症を生じます。高P血症もビタミンDの活性化を傷害するため低Ca血症を助長します。
【88B61】
慢性腎不全における低カルシウム血症の原因はどれか.3つ選べ.
a 無機リンの蓄積
b 腸管からのカルシウム吸収低下
c 骨の副甲状腺ホルモンに対する感受性亢進
d 肝における25-hydroxy-vitamin D3の産生低下
e 腎における1,25-dihydroxy-vitamin D3の産生低下
コメント
109D19の外れ選択肢として出題され、
平成30年版医師国家試験出題基準にも追加された、
『腫瘍性低リン血症性骨軟化症』という疾患があります。
腫瘍から分泌されるFGF23が悪さをしているのですが、
慢性腎不全でもFDF23がリン蓄積によって骨細胞から産生され、腎臓での活性化vitD産生を抑制し、低Ca血症の助長やCKD-MBDの発症に繋がるらしいですね。
個人的には、『FGF23』も学生が抑えるべきポイントになるのでは、と思っています。