アンジオテンシンⅡ ってアルドステロン分泌を促進させるやつでしょ?
それだけではないんだ。アンジオテンシンⅡ 自体も昇圧作用を持っているんだよ。
アルドステロンだけじゃないんだ!
ちなみにアンジオテンシンⅡ の作用に着目したのがRA系で、RAA系と混同しやすいから注意してね。
血圧上昇作用
アンジオテンシンⅡ(ANG Ⅱ)には様々な作用があります。副腎皮質のみならず、各臓器に発現しているAT1(アンジオテンシンⅡ受容体 type1)と結合して、血圧上昇、体液量増加、GFR上昇に作用します。
<ANGⅡの作用>
- 全身の血管の収縮
- バソプレッシン(AVP)の分泌促進
- アルドステロン分泌促進
- 近位尿細管でのNa+再吸収促進
- 輸出細動脈の収縮
バソプレッシンの作用→水の再吸収促進
アルドステロン、近位尿細管でのNa+再吸収促進
上の4つが血圧上昇に働いているのはわかるでしょう。このページでは輸出細動脈の収縮を中心にACE-I、ARBの腎保護作用まで勉強します。
まずはアンジオテンシンⅡ には昇圧作用があることを知ってください。
GFRを正常に保つ作用
腎血流量低下時に輸出細動脈を収縮させる
腎臓は血液から老廃物や毒素などを排出するために尿を生成しています。いわば血液から悪いものを"こしだしています"。こしだす場所は糸球体です。
輸入細動脈→糸球体→輸出細動脈
通常、輸出細動脈は輸入細動脈より細くなっています。これは濾過の圧力をかけるためです。しかし、腎血流量が低下すると十分な圧力を維持できず濾過が不十分になっています。これを防ぐためにアンジオテンシンⅡ は輸出細動脈を収縮させて濾過が十分に行えるようにします。
難しく言うと
アンジオテンシンⅡ はGFRを正常に保つ
となります。
ホースの口を狭めて水圧をあげるようなものですね。
血管の収縮は即効性がある
腎臓の数値を見てください。
RBF(腎血流量) | 1,100 ml/分 |
RPF(腎血漿量) | 600 ml/分 |
GFR(糸球体濾過量) | 100 ml/分 |
1分間に心拍出量の4分の1もの血流があり、こしだす量も多いですね。
一日で 0.1 × 24 × 60 = 144 L もの濾過量があるもんね!
2l アクエリアス 72本分…というか体より重いね
逆に言えば、それだけの量を濾過する必要があるということです。アンジオテンシンⅡ の血管収縮作用は即効性があります。一方で、副腎皮質球状層からアルドステロンが分泌され作用するまでに数時間以上を要します。
輸入細動脈の傍糸球体細胞で腎血流量は監視されていますが、「十分に血圧、GFRが保たれていない」と判断されて、レニンが分泌されるのでしたね。その際にすぐに昇圧として活躍するのはアンジオテンシンⅡのRA系なのですね。
ACE-I/ARBの腎保護作用
ACE-I/ARBには腎保護作用がある
とありますが、これはアンジオテンシンⅡ の輸出細動脈を収縮する作用をブロックするからです。高血圧(腎臓にとっては糸球体内圧)が高いと腎臓の糸球体の毛細血管はダメージを受けます。
とりわけ、アンジオテンシンⅡ の輸出細動脈収縮をブロックし糸球体内圧を下げるので腎保護作用があるというわけです。
ですので降圧作用に加え腎保護作用を期待して、慢性腎不全の患者さんの降圧剤には原則ACE-I、ARBを使用します。