スタチンは高コレステロール血症の治療薬です。詳しくは高LDLコレステロール血症の第一選択薬です。適応は高脂血症(特に高コレステロール血症)、家族性高コレステロール血症(ヘテロ結合型)です。
<スタチン効用のポイント>
HMG-CoA還元酵素を阻害することにより、肝臓でのコレステロール合成を阻害。これによって肝細胞内のコレステロールが減少してLDL受容体の合成が亢進し肝臓に取り込まれるLDLが増加した結果、血中LDLが減少します。
また、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の副作用として重要なものに横紋筋融解症があります。
スタチンの作用機序、横紋筋融解症について理解を深めましょう。
スタチンの作用機序
コレステロール代謝で最も重要な臓器は肝臓です。肝細胞にはコレステロールが一定量貯蔵されるようにできています。コレステロールは人体に必要な物ですよね。
コレステロールの産生・流入経路は3つ有ります。
- 合成 ←スタチンがブロックする
- 食事
- 血中
です。
3つの経路のうち、スタチンは1の合成を阻害することで、肝臓にプール(貯蔵)されているコレステロールを減少させます。コレステロール量を保つために、3の血中からの吸収量を増やす為にLDL受容体を合成亢進させ、血中からLDLを取り込みます。ですので、LDLコレステロールが上昇するⅡa、Ⅱb型高脂血症の治療薬として使われます。
横紋筋融解症
スタチン系、フィブラート系薬剤(高TG血症の治療薬)を投与中の患者で最も気をつけるべき副作用は横紋筋融解症です。頻度は非常に低い(0.02 ~ 0.03%)ですが、治療が遅れれば死の恐れがあります。全身倦怠感、筋肉痛、乏尿が出現した場合はまず横紋筋融解症を考えます。
横紋筋融解症は急速な骨格筋の融解、壊死が生じます。血中に筋細胞成分が漏出し、急性腎不全をきたします。疑った場合には、血清CKの測定が重要になります。
適応疾患
高脂血症(特に高コレステロール血症)、家族性高コレステロール血症(ヘテロ結合型)です
高脂血症について
初めに、「スタチン系は高LDLコレステロール血症の第一選択薬」と書きましたが、高脂血症の治療にも使われます。HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)はLDLコレステロールを強力に下げる作用を持つと同時に、総コレステロール、トリグリセリドも低下させます。したがって「脂質異常症にスタチン系は有効」は間違ってはいませんが、特に高LDLコレステロール血症(Ⅱa、Ⅱb型高脂血症)に良い適応だと覚えておきたいですね。
家族性高コレステロール血症(ヘテロ)
家族性高コレステロール血症はLDLレセプターの欠損が原因で肝臓にLDLコレステロールを取り込めなくなった結果、高コレステロール血症になります。コレステロールの肝臓への流入経路は3の血中から肝臓に取り込む経路のレセプターがうまく働いていないんですね。
ヘテロのみが適応なのはホモの家族性高コレステロール血症ではLDLレセプターが完全に機能していません。この状態でスタチンで1のコレステロール合成を阻害したところで、3の血中からLDLコレステロールを肝臓に取り込む経路が使えないので、血中のLDLコレステロールは減少しません。
以上のような理由で、スタチンの適応は家族性高コレステロール血症のヘテロにのみ適応となります。
禁忌
妊婦、妊娠の可能性がある人、授乳婦に使用してはいけません。(催奇形性を疑う報告があり)
腎機能障害がある人にはフィブラート系との併用は禁忌(横紋筋融解症のリスクが上昇するため)
服薬指導
スタチン系薬剤はシトクロムP450により代謝を受けるため、多くの薬剤と相互作用が予測できます。グレープフルーツジュースと一緒に飲むと薬の効果が強まるので一緒に飲まないように指導します。