下痢ではなぜ代謝性アシドーシス、低カリウム血症になるのか?

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下痢ではなぜ代謝性アシドーシス、低カリウム血症になるのでしょうか?ポイントは下痢は体液の喪失という点です。下痢があると体液はどのように変化するのでしょうか?

まずは低カリウム血症と高Cl性代謝性アシドーシスをおえさよう

ここで、下痢便の電解質濃度を見てみましょう。電解質濃度は

[Na] 25~50 mEq/L [K] 35 ~ 60 mEq/L [Cl] 20~40 mEq/L

とされています。ここで、注目して欲しい濃度は[K]です。血清濃度(4 mEq/L)と比較して、大幅に多いことがわかります。また、腸液にはHCO3が多く含まれます。つまり、下痢はKとHCO3を喪失するということです。よって、大量の下痢を生じると

  • 体液量の大幅な減少
  • 体液減少に対応するADHの過剰分泌による低ナトリウム血症
  • K喪失による低カリウム血症
  • HCO3喪失による高Cl性代謝性アシドーシス

を呈します。輸液としては、体液量の補正、Kの補給、HCO3の補充が重要になります。この記事ではこれらを理解できればよいでしょう。

理解を深めたいという方のために高Cl性代謝性アシドーシスを簡単にみていきましょう。

高Cl性代謝性アシドーシスって?

代謝性アシドーシスでは、[HCO3]が減少しています。基準値 24mEq/l ですから、24より下回っているのところは、高AG性代謝性アシドーシスと共通のところです。アシドーシスですから、pH↓も共通です。pH↓,HCO3↓ である場合に、高AG性代謝性アシドーシスなのか高Cl性代謝性アシドーシスなのか、わかるとよいですね。(後述するアニオンギャップの出番です)

まずは、高Cl性代謝性アシドーシスをみてみましょう。

下痢が原因で高Cl性代謝性アシドーシスになるのでしたね。これは、HCO3の喪失が原因でした。HCO3が失われた結果、陰イオンの不足を補うためにClが補充されます。

AG(アニオンギャップ)ってどこかに出てきましたか?用語として、高Cl性代謝性アシドーシスのことを正常AG性代謝性アシドーシスとも言いますが、AGではなく、Clに着目して覚えられる点で高Cl性代謝性アシドーシスのほうが良いのかなと個人的に思います。

実際に高Cl血症を呈していれば、例えば Cl 120 mEq/L の数値を見た時に高Cl性代謝性アシドーシスと想起されやすくなるでしょう。

では、高AG性代謝性アシドーシスとどう違うのでしょうか。

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スタート地点が違う

高AG性代謝性アシドーシスは、血中の酸の増加が原因です。そのまま不揮発が増えたからアシドーシスに傾くのです。

(先ほどの、高Cl性代謝性アシドーシスは何がスタートでしたか?HCO3の喪失でしたね。)

高AG性代謝性アシドーシスでは、血中に酸が放出します。仮にその酸をHAとすると

HA ↔ H+ + A-

と血中では解離します。緩衝作用でHCO3-が消耗されます。

H+ + A- + HCO3 → H2CO3+ A-

ということは、血中に不揮発酸HAが放出されればされるほど、HCO3は消耗されA-は増加することになります。A-は陰イオン(anionのA)ですので、HCO3-担っていた電荷をClで補正する必要はないんですね。ちなみにアニオンギャップとはanion(陰イオン)のギャップです。簡略化して書くと

AG = Na+-Cl--HCO3

代謝性アシドーシスなのですから、前提としてHCO3-は低下しているはずです。ですので、AGが上昇しているということはClが不変を示唆します。前述のとおり、pH↓,HCO3↓ である場合に高AG性代謝性アシドーシスなのか高Cl性代謝性アシドーシスなのか、その鑑別点にAGが使えます。ちなみにAGの基準値は12±2ですので 12とおぼえましょう。

代謝性アシドーシス かつアニオンギャップ増加

→HCO3-の低下 かつClは不変

→ Cl、HCO3-以外の陰イオンの増加

→ 不揮発酸の増加を示唆

比較

簡単に対比して終わりにしましょう。

高AG性 高Cl性
スタート地点 不揮発酸増加 HCO3-の喪失
疾患
  • ケトアシドーシス
  • 乳酸アシドーシス
  • 末期腎不全
  • 薬物中毒
  • 尿細管アシドーシス
  • 下痢
  • 副腎不全
  • 保存期腎不全

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コメント

  1. くらじゃいる より:

    多くの代謝性アシドーシスは高カリウム血症になりますが、
    これは例外の1つですね

  2. 名無し より:

    コメント失礼します。
    ADH分泌亢進したらNaの血中濃度は上昇するのでは?

  3. 名無し より:

    失礼しました、ADHは水チャネルを介した水の再吸収作用だから水だけを動かすのですね。
    希釈性に低Na血症という理解であっているでしょうか?

    • Shunsuke Esaki より:

      コメントありがとうございます。私もそのように考えております。
      水の再吸収作用ですので濃度を薄める方向に作用します。
      ADH放出の主な分泌刺激は体液浸透圧の上昇(視床下部浸透圧受容器で感知)もう1つの重要な刺激は血液量の減少で、今回はこちらですね。
      ADHが関係する病態としては尿崩症とSIADHが有名ですね。

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