腸閉塞の分類
イレウス(腸閉塞)のうち、物理的に腸管内腔が閉塞されるイレウスを機械的イレウスといい、機械的イレウスは次の2つに分類されます。
- 単純性(閉塞性)イレウス simple bowel obstruction
- 複雑性(絞扼性)イレウス strangulated bowel obstruction
2つの違いは血行障害を伴うかどうかで、その鑑別(複雑性の除外)がとても大切になります。
絞扼性イレウスは術後の癒着(最多)、腸重積症、腸軸捻転症、ヘルニア嵌頓などが原因になります。
複雑性イレウスを疑ったら何をするか?
複雑性イレウスは緊急性が高いのは血行障害を伴うからでした。治療が遅れると腸管壊死からショック、腹膜炎にいたり致死的な経過をとります。
複雑性(絞扼性)イレウスを疑ったら、造影CT、血ガス測定を試行します。
<腹部造影CTでの所見>
- 腸管壁の浮腫
- 造影不良
- 大量腹水
<血ガスの所見>
血行障害で、腸管壊死をきたすので壊死所見、代謝性アシドーシスの所見を認めます。
- WBC↑
- CK↑
- LDH↑
- 代謝性アシドーシス
複雑性イレウスを疑う所見とは
比較してみよう
単純性 | 複雑性 | |
痛みの違い | 疝痛(間欠的、反復性) | 激痛、強度の圧痛
突発する持続性の痛み |
経過 | 比較的緩徐 | 急速に進行 |
腹部所見 | 腹部膨満感など
鼓音 柔らかい |
筋性防御
反跳痛(Blumberg徴候) |
聴診所見 | 腸雑音亢進
金属音(metallic sound) |
腸雑音減弱・消失 |
血ガス | 代謝性アシドーシス | |
造影CT | 造影不良など | |
治療 | イレウス管・胃管挿入
輸液 臭化ブチルスコプラミン静注 |
緊急手術 |
腹痛の違い - 疝痛と持続する激痛
単純性イレウスの腹痛は発作性・間欠的に生じるものです。
これを疝痛といい、これは腸管由来の疼痛です。通常の腹痛でも急激に痛みだしてスッと消えたかと思えば再び思い出したかのように痛み始めます。
一方、複雑性イレウスでは体動により増強する激しい腹痛を持続的に認めます。
複雑性(絞扼性)イレウスを認めたら基本的に緊急手術の適応となります。
注意 見落とさない為の理解
繰り返しますが、イレウスを認めたら「本当に複雑性(絞扼性)イレウスではないか?」「見落としていないか?」という意識が大切で、先ほどの所見を覚えておけばOKというわけにはいきません。
腸管虚血の早期腹部所見の特徴
「腹部は柔らかく、腹膜刺激症状はないが激痛」という特徴があります。
腹部が柔らかい→絞扼性ではない→痛み止めを使用して経過を診てしまうことがあります。
そうして見逃してしまい壊死が進行し、腹膜刺激症状が生じ、ショックで搬送されてくるなんてことも…