原発性副甲状腺機能亢進症は副甲状腺の腺腫、過形成、癌などにより副甲状腺ホルモンの産生が亢進した病態です。原発性副甲状腺機能亢進症では高Cl性代謝性アシドーシスを呈します。これを理解するには副甲状腺ホルモン(PTH)の作用の理解が不可欠です。というより、PTHをしっかり理解すればOKです。PTHわかっているよという人は目次から飛んでください。
PTHの作用
PTH:parathyroid hormone または parathormone(パラトルモン) は、Caの代謝に大きく関わっています。Caは重要な電解質であるため、PTH、活性型ビタミンDにより厳重にコントロールされています。PTHは最終的には
- 血中Ca↑
- 血中P↓
の方向に作用します。通常は、CaとPは相関関係にあります。PTHはCaとPを乖離させるめずらしい作用です。

作用部位・詳細
PTHの作用部位は骨と腎臓です。
作用 |
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全て血中のCa2+濃度を上昇させる方向に働いていますね。活性型ビタミンDは小腸でのCa吸収を亢進させるため、これも血中Ca濃度を上昇させる方向に働いています。
高Cl性代謝性アシドーシス
やっと本題ですね。PTHの作用をしっかり把握していれば理解は容易いです。まず、代謝性アシドーシスとは何かというと[HCO3]が減少ですよね(基準値 24mEq/l)。
PTHの作用には
がありましたね。HCO3-の減少のスタートは"腎臓での喪失"です。HCO3-を喪失すると、電気的平衡を保つため、Clが反応性に増加する結果、高Cl性代謝性アシドーシスをきたします。(高AG性代謝性アシドーシスならば不揮発酸の増加がスタート。緩衝作用の為にHCO3-が"消耗"されて減少します)
もっと勉強されたい方は

をご覧になってください。
なぜPTH分泌で代謝性アシドーシスに傾くのか
HCO3-を排泄して代謝性アシドーシスにさせる意味・目的って何でしょうか?
血中のCaの一部はアルブミンと結合しています。生理活性を持つのは、アルブミンと結合していないfree Ca2+です。
PTHで破骨細胞を活性化させてせっかく動員したCaがアルブミンと結合しては意味がありません。そこで代謝性アシドーシスに傾かせて、アルブミンとCaの結合を解離させるのです。(結合しにくくする。Hが代わりに結合)
HCO3-を排泄して代謝性アシドーシスにさせる
↓
血中で過剰になったH+をアルブミンと結合させるため、Ca2+を乖離させる
↓
結果的に血中Ca ↑に働く