妊娠糖尿病って?
妊娠糖尿病(GDM: gestational diabetes mellitus)は
のことです。臨床診断において糖尿病と診断されるものは除外されます。
- 元々糖尿病がないか
- 明らかな糖尿病と診断されていないか
という視点を持ちましょう。元々糖尿病があればそれは「糖尿病合併妊娠」、妊婦でなくても糖尿病と診断される糖代謝異常は「糖尿病」です。妊娠糖尿病(GDM)とハッキリ区別しましょう
診断基準
妊娠糖尿病は糖尿病に至っていない糖代謝異常でしたね。従って、通常の糖尿病の診断基準より厳しい基準です。
妊娠糖尿病の診断基準 |
75gOGTTにおいて次の基準の1点以上を満たした場合に診断する |
※ただし、臨床診断における糖尿病と診断されるものは除外する |
1つ以上該当する場合、糖尿病型と診断する
- 血糖値(空腹時血糖 ≧ 126 mg/dL, 2時間値 ≧ 200 mg/dL, 随時血糖 ≧ 200 mg/dLのいずれか)
- HGA1c(NGSP) ≧ 6.5%
どうして厳し目なの?
妊娠糖尿病の意義は、糖尿病に至らない軽い糖代謝異常でも児の過剰発育が起こりやすく周産期のリスクが高くなることが挙げられます。また母体の糖代謝異常が出産後一旦改善しても、一定期間後に糖尿病を発症する危険性が高いことにあります。
合併症
<胎児、新生児の合併症>
- 巨大児
- 奇形(4〜16週の血糖コントロール不良)
- 低血糖
- 呼吸障害
- 高ビリルビン血症
- 多血症
<母体の合併症>
- 糖尿病ケトアシドーシス
- 網膜症、腎症などの悪化
- 尿路感染症
- 妊娠中毒症
- 羊水過多症
- 早産・流産(DM type1での低出生体重児に多い)
- 過期産(DM type2 での巨大児に多い)
妊娠中はhPLが胎盤から分泌され、糖代謝が変化して胎児に優先的にグルコースを届けるようになります(随時血糖値↑)。そのような背景と妊娠糖尿病を合わせて考えれば、非妊娠時よりも糖尿病のリスクが高いと連想できます。
治療
血糖コントロールの方法は、まずは食事療法で経過観察し、HbA1c 7.0%未満を目指します(7.0%は妊娠許可基準のひとつ)。インスリン治療は極端な高血糖や糖尿病ケトアシドーシスなどを認めないかぎり、最初から投与は行いません。
血糖コントロール目標値
空腹時血糖(FBS) | 70〜100 mg/dL |
OGTT 2時間値 | 120 mg/dL |
HbA1c(NGSP) | 6.2% |