家族性アミロイドニューロパチー(FAP)の病態

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

家族性アミロイドポリニューロパチーFAPって?

くみちょう

エフエーピー!

家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP: familial amyloid polyneuropathy)は、末梢神経をはじめとした、全身の臓器に異常トランスサイレチンがアミロイドとなり沈着し全身症状を呈する遺伝性ニューロパチーです。

遺伝形式は常染色体優性遺伝で、20代〜40代で発症します。

えさきち

常染色体優性遺伝をイメージすれば、成人になって発症、慢性経過の疾患と理解できます。仮に小児で発症して急性の経過を辿るのであれば遺伝子が受け継がれる前に命のバトンを繋げることが難しくなります。

慢性の経過と言っても自然経過では15年から20年ほどで心不全、腎不全で死亡することが多く、早期に診断して治療することが大切です。主に肝臓において異常トランスサイレチンが産生されるのでFAPは生体肝移植の良い適応疾患になります。

FAPの概要

アミロイドニューロパチーとあるように、FAPはアミロイドーシスによるニューロパチーを起こしたものです。アミロイドの元になるものは主に肝臓で産生される異常トランスサイレチンです。

FAPの症状

FAPのneuropathyには特徴があります。それぞれ見ていきましょう。

えさきち

末梢神経障害にはMotor、Sensory、Autonomicの3つがありました

末梢神経障害(neuropathy)の症状
末梢神経障害は感覚・運動・自律神経障害 末梢神経障害の障害は大きく分けて3つあります。 です。末梢神経と大きな括りを使用するのはこの...
スポンサーリンク

Sensory & Motor

病初期には解離性感覚障害

病初期では温痛覚障害のみが認められます(解離性感覚障害)。つまり、触覚は(温痛覚に比べ)保たれているのが典型的な所見です。

えさきち
神経は長い&細いものから障害されるという原則が有ります
くみちょう

だから手足の遠位端から障害されるんだね!

えさきち
脊髄から遠い神経だからね。GBSなどで急性発症の疾患でも"両下肢遠位端から筋力低下が始まり次第に上行する"という文言を聞いたことがあると思います。

他にも、指標として臍部が有用です。これも脊髄から体表ぐるりと"長い"枝を伸ばして臍部に神経が到達しているので、障害されるときは臍部から障害されます。

【解離性感覚障害の例】

  • 温痛覚障害が膝下まで及んでいるのに対し、触覚は足首より遠位に限局しているなどの解離がある。
  • 臍部で温痛覚が低下しているのに、触覚は保たれている。

進行すると全感覚障害、下肢遠位筋の萎縮(歩きづらさ、鶏歩を呈する)、腱反射の消失を呈します。

Autonomic

FAPは自律神経障害が著名です。中でも

  • 膀胱直腸障害(繰り返す下痢と便秘)
  • 起立性低血圧

などが目立ち、症状が進行すれば発汗低下、EDを始めとした他の自律神経障害も認めます。

えさきち

繰り返す激しい下痢(と便秘)は特徴的で、栄養失調のためヤセをきたします。

不溶性のアミロイドが沈着することによる症状ですから、不可逆的な変化になるため早期発見・早期治療が重要です。

FAPの診断

FAPを疑ったら生検を行いアミロイドの沈着を確認します。生検部位は基本的には障害臓器が好ましいですが、障害部位以外でも消化管(胃、十二指腸、口唇)、粘膜や腹壁脂肪でも診断可能です。

アミロイドを確認できたら、アミロイドの病型診断を行います。免染でTTRが沈着していることを確認できたら、遺伝子検査でTTR遺伝子のV30M変異を確認できたら家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の確定診断になります。

えさきち
TTRが蓄積するアミロイドーシスにはFAP(変異型TTR)と老人性アミロイドーシス(野生型TTR)があります。遺伝子診断で変異を認めてはじめてFAPの診断に至ります

アミロイドーシス診療は疑うことから始まる

生検を行いアミロイドの沈着を確認しないとアミロイドーシスの診断は尽きません。当たり前ですが、FAPはスクリーニングでは見つかりません。アミロイドーシスは

えさきち

今まで年のせいだと思われていた原因不明の高齢者の心不全は実は老人性アミロイドーシスが原因だったといわれています。

原因不明のニューロパチーの場合、典型的でなくてもFAPなどのアミロイドーシスの鑑別が必要です。次の章でも書きますが、IVIgに反応しないCIDPは実はアミロイドーシスだったという症例もあるようです。

"家族性"アミロイドポリニューロパチーの名称について

FAPは熊本県、長野県、石川県などの集積地があるといわれてきましたが

一方で、家族歴の乏しい「非集積地の家族性アミロイドポリニューロパチー」の存在が明らかになってきています。

えさきち
どちらもTTR遺伝子に変異(V30M)はあり、原因には違いはありません。しかし、そこに家族性がないものがあるということです
非集積地のFAP患者 集積地のFAP患者
  • 集積地と関連なし
  • 家族歴乏しい
  • 男性が多い男女比 4.5:1
  • 高齢発症(50歳以上)
  • 自律神経障害が軽度
  • 解離性感覚障害が軽度
  • 大径線維障害が多い(CIDPとの鑑別が必要)
  • 手根管症候群をきたしやすい
  • 心肥大をきたしやすい
  • 集積地あり
  • AD、家族歴あり
  • 性差なし
  • 若年発症(20代~40代)
  • 自律神経障害が著名
  • 解離性感覚障害あり
  • 小径線維ニューロパチー
  • 手根管症候群をきたす
  • 房室ブロック
  • 硝子体混濁

これまで家族歴がないゆえに、FAPと診断されてなかった可能性があり現在研究が進められています。

家族歴がないFAPがあるので"家族性"という名称は不適切な部分があります。最近の傾向としてアミロイドーシスは蓄積する蛋白の名称をもとにA○○型アミロイドーシスと分類し、FAPはATTR型アミロイドーシスとなります。

ATTR型アミロイドーシス

A(アミロイド)

TTR(トランスサイレチン)

FAPの治療

肝臓で異常トランスサイレチンが産生されるので生体肝移植が有用です。

また抗炎症薬(ジフルニサル)に加えて世界初のFAP治療薬であるタファミジスを用いることでFAPのニューロパチーの進行を遅らせることが出来るとわかってきました、

タファミジスは四量体安定剤でトランスサイレチンの四量体の解離を抑制することで効果を発揮します。

臨床実習の傍ら、Webサービスを運営している医学生。将来の夢は学校をつくること。琴線を記録するサービス kotonohaを製作しました。(俺、この戦争が終わったらスタートアップするんだ...)
BUMP OF CHICKEN が大好き
bot作りました→といえばbot
botは知識の整理に超有用です。twitter開く度に復習出来ます。
その他111回受験生オススメbot→こちら
Test
気に入っていただけたらシェアお願いします
スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です