強皮症の自己抗体は何ですか?
<診断基準>
全身性強皮症・診断基準 2010 年
大基準 手指あるいは足趾を越える皮膚硬化*
小基準
- 1)手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化
- 2)手指尖端の陥凹性瘢痕、あるいは指腹の萎縮**
- 3)両側性肺基底部の線維症
- 4)抗トポイソメラーゼI(Scl-70) 抗体または抗セントロメア抗体または抗 RNA ポリメラーゼ III 抗体陽性
大基準、あるいは小基準 1)かつ 2)〜4)の 1 項目以上を満たせば 全身性強皮症と診断
- * 限局性強皮症(いわゆるモルフィア)を除外する
- ** 手指の循環障害によるもので、外傷などによるものを除く
目次
強皮症scleroderma(SD)の分類
内臓病変を合併するかしないか
強皮症は皮膚が浮腫→硬化→萎縮と変化していく疾患です。強皮症は
- 全身性強皮症(SSc systemic sclerosis)
- 限局性強皮症(localized scleroderma)
"全身性 systemic" の意味を正しくおさえましょう。一般にいう狭義の"強皮症"は全身性強皮症をさします。限局性強皮症はMorphea(モルフィリア)などを指し、一般にいう強皮症、つまり全身性強皮症とは別疾患だと思うのが良いかもしれません。
全身性強皮症SSc
病型分類
全身性強皮症にも病型分類があります。この病型分類に抗トポイソメラーゼⅠ抗体、抗セントロメア抗体の意義がでてきます。
<全身性強皮症の病型分類>
- びまん皮膚硬化型(dcSSc)
- 限局皮膚硬化型(lcSSc)
ここにも限局って出てきてややこしいな!!
そうなんだ。詳しく見てみようか
LeRoy & Medsger の分類 | |
<びまん皮膚硬化型> | <限局皮膚硬化型> |
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全身性強皮症(SSc)の症状の一つに皮膚の硬化があります。これは一般的に手指から上肢へと上行します。抗トポイソメラーゼⅠ抗体が陽性であるびまん皮膚硬化型は硬化の範囲が肘を超え体幹にまで及びます。また病勢の進行、内臓病変の程度にも違いがみられます。
強皮症腎クリーゼをきたしやすいのもびまん皮膚硬化型だね
なるほど。どの抗体が陽性になるかでこれからの経過や合併症のリスクを予測できるんだね!
絶対的なものではないけれど、診断や治療方針の助けになるんだ。たとえば病状の初期では手背の硬化のみの症状かもしれない。その時点ではどちらかわからないからね。
抗体について
抗トポイソメラーゼⅠ抗体が陽性であればLeRoy & Medsger の分類では原則的にびまん皮膚硬化型(dcSSc)に分類します。しかし、びまん皮膚硬化型の患者で陰性の人もいます。
抗トポイソメラーゼⅠ抗体(抗Scl-70抗体)
びまん皮膚硬化型の40%、限局皮膚硬化型の15%で認められ、SScに特異的です。
(抗Scl-70抗体)って何なのさ!別名も覚えなきゃいけないの!?
これは抗原がよくわかっていなかったときに名づけられた古い名称でsclerosisから"scl"をとってるよ。抗トポイソメラーゼⅠ抗体のほうを覚えましょう。
抗セントロメア抗体
びまん皮膚硬化型の3%未満、限局皮膚硬化型では30~60%に認められ、限局皮膚硬化型のマーカーになります。これは抗核抗体検査で唯一離散斑紋型(discrete speckeled type)を呈します。
抗RNAポリメラーゼⅢ抗体
男性の重症型で見られやすい抗体で、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体陽性は腎クリーゼのリスク因子の一つです。
まずは抗体名と疾患名をセットで覚えるのが一番ですが、それでは面白くないのでいろいろ調べてみました。抗体検査は診断の為に調べるとばっかり思っていましたが、どの抗体が陽性になるかで合併症や予後を予測できるんですね!