後天性QT延長症候群の原因
QT延長症候群(LQTS)には遺伝性のものである先天性QT延長症候群と誘因がある後天性QT延長症候群があります。
後天性QT延長症候群は、安静時のQT時間は正常範囲ですが、抗不整脈薬など誘因が加わった場合にQT時間が著明に延長し、TdPを発症します。
QT延長症候群をきたす原因に
- 抗不整脈薬(Ia、III群)
- 電解質異常(低CaMgK)
- 抗菌薬(ニューキノロン系、マクロライド系、ST合剤)
- 徐脈
- 抗精神病薬
電解質異常の覚え方"定価のマック"
低CaMgK(定価のマック)でQT延長
従来の医師国家試験ではこの有名なゴロを覚えていればなんとかなりましたが、110回でこんな問題が出ました。
110E34QT延長に注意すべき抗菌薬はどれか.2つ選べ.
定価のマックNewマック
定価のマック(低CaMgK)Newマック(ニューキノロン、マクロライド)
出題内容はこのゴロで覚えられます。
試験対策で覚えるのは良いことなのですが、代表的な薬剤である抗不整脈薬がないがしろになりそうです。試験対策の弊害というか...
抗不整脈薬は一般に治療目的とする不整脈を軽快させますが、量が多かったり投与期間が長すぎたりすると他の不整脈を誘発する可能性があります。(proarrhythmic effect)
引用 http://www.ncvc.go.jp/hospital/section/cvm/arrhythmia/lqts.html
くらじゃいるさんのコメントより医師国家試験94E15で抗不整脈に関する出題がありましたので紹介します。
【94E15】
75歳の男性.今朝から動悸を感じ,気が遠くなるようなめまいも出現したため来院した.20年前から高血圧があり,5年前から1~2時間持続する動悸を感じ,かかりつけの医師から抗不整脈薬の投与を受けていた.4日前から下痢が続いていた.来院時の心電図を次に示す.
直ちに確認すべきことはどれか.2つ選べ.→答え:服薬内容の確認(Ia群、Ⅲ群)、血清電解質(低CaMgKきたしてないか?)
(補足)β遮断薬は後天性QT延長症候群には禁忌
先天性QT延長症候群では交感神経刺激(水泳、目覚まし時計のアラームなど)が頻拍発作の誘因と考えられているためβ遮断薬が治療薬となりますが、薬剤や電解質異常などによる二次性(後天性)のQT延長の場合は、徐脈がQT延長を増悪し心室性不整脈の誘因となるためβ遮断薬は禁忌です。
徐脈それ自体がQT延長のリスク
コメント
医師国家試験94E15では抗不整脈が悪さをしている感じですね。
TEC●Mの講義では非遺伝性QT延長症候群の原因が抗不整脈薬Ia、三環系抗うつ薬、低K血症しか板書されなかったので、110E34で意表を突かれたことはよく覚えています。
非遺伝性QT延長症候群、それいいですね。私も今度から非遺伝性QT延長症候群と呼ぶことにします。学会的には後天性QT延長症候群が正式かもしれませんが、非遺伝性QT延長症候群のほうがしっくりきますね。
今解いてみましたが94E15はいい問題ですね。臨床して慣れてくるとこういう病歴見ただけでピンッとくるようになるんですかね。