目次
微小変化群
微小変化群ネフローゼ症候群(MCNS minimal change nephrotic syndrome)は、小児でネフローゼ症候群をきたす疾患で有名です。
好発
小児〜若年者の疾患です。特に3~6歳に好発します。
小児のネフローゼ症候群はほとんどが1次性でその多くが微小変化群です。
成人の1次性ネフローゼ症候群の主要な原因でもあります。
小児のネフローゼ症候群の印象が強いけど成人でもあるんだね!
そうですね。再発しやすいこともありますが、比較的若年の成人に発症します。中高年者のネフローゼ症候群は膜性腎症が多いですね。
年齢は重要な情報なんだ!
MCNSはチャージバリアの障害
<おさらい>
血液から尿を"こしだす"際の網目の役割をするのが糸球体係蹄壁です。糸球体係蹄壁には2つのバリアがあります。
- 基底膜からなるサイズバリア
- 上皮細胞(たこ足細胞)からなるマイナスチャージバリア
これらが破綻し、持続的に蛋白が漏出しネフローゼ症候群をきたします。
MCNSはマイナスチャージがやられた結果、アルブミンが漏れていく疾患です。(マイナスチャージが失われるのは活性型T細胞の産生するサイトカインが原因です。)
正常の糸球体では、蛋白質は分子量が大きくサイズバリアを通れません。サイズバリアを通過する分子量の小さな陰性家電の蛋白質(アルブミンが代表)はマイナスチャージと反発して通過できません。(チャージバリア)
通常の糸球体疾患では基底膜自体が破壊されるためサイズバリアも障害されますが、MCNSではマイナスチャージバリアのみが障害されています。そのため、他の分子量の大きいタンパク質は漏出せず、分子量の比較的小さな蛋白質(アルブミン)のみが漏出します。これを
と表現します。
変な日本語
つまり
ということですね。
微小変化群ではマイナスチャージが破綻した結果、血清蛋白の約半数を占めるアルブミンが持続的に漏出しネフローゼ症候群をきたす!
症状
浮腫と高度の蛋白尿が急激に出現する
発症は急激です。全身性の浮腫や高コレステロール血症を伴いやすく、高度のアルブミン尿が認められます。アルブミン尿は他のネフローゼ症候群との重要な鑑別点で、ステロイドの有効性を期待できます
肉眼的血尿や赤血球円柱は稀です。
炎症で破壊されたのではなくてチャージバリア剥がされただけだからね。
電気の衣!エレクトリックチャージ無効化!
急におかしくなった…
検査所見
光学顕微鏡所見
糸球体は光学顕微鏡では異常は認められません(一見正常)。これもチャージバリアが剥がれる疾患だからです。
電子顕微鏡所見
糸球体上皮細胞の足突起の消失
電顕じゃないとわからないような変化…"微小変化"ってことだね
治療
一般に副腎皮質ステロイドが有効で予後良好です。糸球体がバキバキに壊れたわけでもなく、マイナスチャージの衣が剥がされているだけなので、その原因を抑えてやれば良いのです。
とリンクさせて覚えておきましょう。従って、医師国家試験の問題では
副腎皮質ステロイドが著効する(経口投与)
免疫抑制剤の併用も有効です。(ステロイドをやめると再発につながる)
再発が多い
ステロイドは初期では小児では90%、成人では60~90%が寛解します。しかし再発を繰り返す症例が多いことが微小変化群の特徴です。
なんでだろ?
チャージバリアが取れた原因は活性型T細胞のサイトカインだったね。これをステロイドで抑えているからステロイドが切れると戻っちゃうことが多いんだね。素因としてアレルギーが背景にあるのではと指摘されています。
ステロイド + 小児
ステロイドは著効しますが、止めると再発をし易い側面があります。
治療とはいえ幼稚園生くらいの子に5〜10年単位で毎日ステロイドを使うことになるんだね。小児にステロイドを用いる際の注意点、副作用ともいえるかな。何か思い浮かぶ?
低身長…
そうですね。十分な説明も必要ですね。
ちなみに、cortisolがvitDのレセプターと拮抗することから成長抑制が起きます。
鑑別疾患
一次性ネフローゼ症候群には
- 微小変化群ネフローゼ症候群(MCNS)
- 膜性腎症(MN)
- 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)
- 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
があります。
アルブミン尿はMCNSだけ
これは重要な鑑別点です。
鑑別疾患 巣状分節性糸球体硬化症
MCNSと同様に急激に浮腫や高度蛋白尿をきたす疾患に巣状分節性糸球体硬化症があります。しかもFSGSも若年者に好発します。
腎生検でFSGSの所見が得られれば診断できますが腎生検を行っても十分に鑑別できない場合があります。
小児で「急激に浮腫や高度蛋白尿をきたす」ようなことがあれば、まずMCNSとして対応するんだったね!
そうそう腎生検するのは負担が大きいしね。実際のところ90%がステロイドが著効するんだ。ステロイドが著効するということはMCNSだと考えられる。
ステロイドが効かない10%は?
ステロイドが抵抗性の時に巣状分節性糸球体硬化症FSGSを考えるんだ。
ということで、ステロイドが効くか効かないかも鑑別点です。他に、巣状分節性糸球体硬化症は血尿もあります。
今までの鑑別点をまとめてみましょう。
MCNS | FSGS |
|
|
長くなっちゃうけど、色々な視点で見たり比較したりして知識をつなげると理解が深まるし何よりおもしろいよね。最後におさらいして終わります
微小変化群ネフローゼ症候群MCNS |
|