心筋梗塞は冠動脈血流の急激な減少により心筋が壊死した病態です。急性心筋梗塞の治療で大切なことは発症早期に冠動脈を再開通させることです。(再灌流療法)
再灌流が臓器であればあるほど梗塞範囲は小さくなり合併症のリスクも小さくなります。
再灌流に成功すればそれで終わりではありません。急性心筋梗塞の合併症も忘れてはなりません。合併症はたくさんがありますが、時間起こりやすい時間毎に分けておさえます。
急性期(発症24時間以内)
- 不整脈
- 心不全
- 心原性ショック
不整脈
不整脈は発症24時間以降もでることはありますが、急性期にみられやすく心室性期外収縮(VPC)が最も頻度が高い。致死的なVF,VTでは速やかに除細動を行います。
2週間以内
機械的合併症が多いことが特徴です。
- 乳頭筋断裂によるMR
- 房室ブロック(下壁梗塞)
- 心破裂
- 心室中隔穿孔
乳頭筋断裂 | 下壁・後壁 | 1週間以内 | 2~3% |
心破裂 | 前壁 | 2週間以内 | 2~3% |
心室中隔穿孔 | 前壁中隔 | 2週間以内 | 0.5~4% |
前壁梗塞による心室中隔穿孔や下壁梗塞によるMRは発症3~5日後の発症が多い。
前壁中隔梗塞には心室中隔穿孔の合併症が多く、低心拍出量症候群に陥り、緊急手術が必要です。
乳頭筋は心室内に存在する筋で、収縮期に収縮し腱索によって強い圧負荷がかかる房室弁を支えます。その乳頭筋が心筋梗塞でダメージを受け断裂すると僧帽弁が収縮期の圧に耐えられずMRをきたします。
心臓の弁の中で最も圧がかかる弁は僧帽弁です。僧帽弁が閉じている時、つまり収縮期は左室側は大動脈につながっているので ex) 120 mmHg もう一方は左房側は ex) 8 mmHgなので圧較差は112 mmHgとなります。その僧帽弁を支える乳頭筋です!
心破裂は心タンポナーデにつながり突然の血圧低下・心不全に陥ります。
重篤な合併症が多いことがわかります。急性期を抜けたからといって安心できるわけではありません。
2週以降
- 血栓・塞栓(脳梗塞)
- 心室瘤
- Dressler症候群
Dressler症候群は心筋梗塞後症候群ともいい、心筋梗塞後2〜8週間で発熱、胸痛をともない発症する自己免疫性の心膜炎でステロイドが著効します。
血液に曝露された心筋組織が抗原となって生じるアレルギーに起因すると考えられています。臨床症状は急性心膜炎に似ますが、治療法は異なります。
通常、心膜炎ではウイルスなどが原因で生じNSAIDSを投与して経過観察しますが、Dressler症候群では自己免疫性の機序が考えられておりステロイドを使用します。
稀な合併症ですが、Dressler症候群による心膜痛と心筋梗塞後の狭心症、再梗塞による胸痛と混同しないことが重要です。
心筋梗塞後の合併症で緊急手術になるもの
【109I9】
a 左心室瘤
b 乳頭筋断裂
c 心室中隔穿孔
d 左室自由壁破裂
e 左冠動脈主幹部病変による不安定狭心症