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敗血症性ショック = sever sepsis + 輸液に反応しないショック
敗血症性ショック Septic shock とは
重症の敗血症で輸液で回復しないショック
のことである。
敗血症は全ての病原体で起こりうるが、敗血症性ショックとなると、グラム陰性桿菌が起こしやすい。(敗血症については一番下で)
感染症にて発熱(38℃以上)している患者が、突然の血圧低下をきたした場合は、敗血症性ショックを疑う。
原因
グラム陰性桿菌の毒素エンドトキシンによるものが多い。(80%)
グラム陰性桿菌の種類
大腸菌(E.coli)、緑膿菌、Serratia、Klebsiell pneumoniaeなど
エンドトキシンショックとの違いは?
敗血症性ショックは、グラム陰性桿菌の毒素エンドトキシンによるものが多い(80%)と書いたが、原因がエンドトキシンによるものがエンドトキシンショックである。
ペプチドグリカンに含まれるエンドトキシンとNOシンターゼ
グラム陰性菌の細胞壁のペプチドグリカンにはエンドトキシンとNO synthase(一酸化窒素合成酵素)が存在する。グラム陰性桿菌が破壊され、エンドトキシン、NOシンターゼが血中に放出される。エンドトキシンは内毒素とも言われ、敗血症ショックの原因となる。NOが産生されることにより、総血管抵抗が低下し、全身の血管が拡張する。
末梢血管が拡張するため warm shock を呈する
ショックは、通常、手指が冷たい(冷感)。これは循環不全が起き、末梢に血液を送れていないからである。これに対し、敗血症性ショックの初期では、NO産生により末梢血管が拡張し、四肢が温かい。触れると「温かい」ので、ほっとしてしまいそうだが、安心してはいけない。ショックと名が付いているのは、全身の循環不全を起こしているということだ。
本来血液を必要とするはずの臓器に血液を送れていない
ショックとは、全身の循環不全状態のことである。敗血症性ショックでは、NOの産生により末梢血管が開いてしまい、心臓に戻ってくる血液(VR: venous return)が減少し、重要な臓器に血液を送れていない大変な事態だ。一番怖いのは虚血に弱い脳だ。脳が損傷を受ければ不可逆な後遺症を残しうる。
心拍出量が増加する
血圧をあげようと人体は働く。
SBP(収縮期血圧) = CO(心拍出量)×R(血管抵抗)
敗血症性ショックでは血管抵抗が落ちてしまっている。血圧をあげるには心拍出量をあげるしか無い。敗血症性ショックの初期では、それに伴い心拍出量は増加する。
輸液を開始するが血圧は上昇しない
血圧をあげるためには、細胞外液量をあげるのが定石だが、輸液を行っても敗血症性ショックでは血圧が上昇しきれない。
昇圧剤の投与
なんとかして、血管を収縮(血管抵抗を上昇)させなければならない。そのため、昇圧剤としてドパミン、ノルアドレナリンなどが使用される。
敗血症との違いは?
しっかりと敗血症ショックを理解するためには、敗血症を正しく抑える。
敗血症はinfection + SIRS
敗血症は感染に加え、全身性炎症反応症候群SIRSを合併したものである。下のベン図で覚えること。
よく菌血症(血流中に細菌が存在すること)と敗血症を混同して覚えている人がいるが、
「菌血症 = 敗血症に至っている」 ではない。
血液培養をして、菌体が確認されれば菌血症だが、SIRSをきたしていればそれは正しくは敗血症である。
SIRSをきたしているかに注目しよう。
敗血症性ショック |
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コメント
ブログ楽しく読ませて頂いております。
ところで、2016年2月に敗血症・敗血症性ショックの定義が新しくなりましたので、
そちらもいつか記事に反映していただければ幸いです。