異型狭心症(冠攣縮性狭心症)は、冠動脈の攣縮(spasm)により生じる狭心症の総称です。通常、狭心症というと動脈硬化などによって器質的に血管が詰まり発症する狭心症を思い浮かべると思いますが、異型狭心症はspasm(冠動脈に生じる一過性の過収縮)によって冠動脈が狭窄・閉塞して心筋が虚血に陥り、狭心症を呈します。
しかしながら、spasmは動脈硬化部位に好発することが確認されており、なんらかの血管内皮障害があると考えられています。spasmがどういった時に起こりやすいか知れば誘発試験などについても理解が深まります。
目次
スパズム(spasm)が起こりやすいときを知ろう
安静時や明け方に起こりやすい
冠攣縮性狭心症は、安静時や夜間に発症することが多いのが特徴です。一定の時間に起こりやすいこと、繰り返す病歴が特徴です。持続時間も数分から20分です。30分以上続く場合はAMI(急性心筋梗塞)を疑います。
夜間特に、明け方の発症が多いのですが、似たような発症形式を取る有名な疾患がありますね。
喘息(asthma)!
明け方は副交感神経が亢進しています。つまり、スパズムは副交感神経が亢進している時に起こりやすいといえます。
その他のリスク因子
喫煙は冠攣縮の危険因子として特に重要です。
スパズムが起こりやすいところは、動脈硬化が進んだ部位だったね。
そうなんだ。血管内皮が障害された結果、血管拡張作用をもつNOを産生が減少するためスパズムにつながるんだ。
過換気・早朝運動時や飲酒も誘発因子であると言われます。
過換気では、低CO2血症によりスパズムが誘発されると考えられています。
<誘発因子まとめ>
- 副交感神経優位のとき(夜間〜明け方)
- 早朝、午前中の運動時
- 過換気
- 飲酒常習者
冠攣縮のリスクを理解したら誘発試験を見ていきましょう。
冠攣縮の誘発試験
冠攣縮誘発試験は確定診断に必要です。
心電図や冠動脈造影でも異常が認められない場合に異型狭心症が疑われ、冠攣縮誘発試験が診断に有用になります。その他の診断方法としてHolter心電図があります。
冠攣縮誘発試験には薬物を使う方法と使わない方法があります。
薬物誘発試験
冠動脈造影(CAG)中にアセチルコリンやエルゴノビンを冠動脈内に選択的に注入し、spasmの誘発を行います。広範にわたって誘発されたり遷延する場合は硝酸薬(ニトログリセリン)を注入し冠攣縮を解除します。
アセチルコリンは副交感神経の神経伝達物質です。
エルゴノビンは麦角アルカロイドで平滑筋収縮作用を持ちます。冠攣縮の誘発の他に子宮収縮薬として用いられます。
感度、特異度ともに90%程度と優れており有用性が高い検査です。
βブロッカーは禁忌
発作はCa拮抗薬によって抑制されますが、β遮断薬によっては抑制されず、むしろ冠攣縮を誘発・悪化させると言われています。
薬物を使わない誘発試験
運動負荷や過換気負荷を行い誘発し心電図を観測します。
薬物を使用した場合に比べ、容易に行なえますが感度、特異度において劣っています。