糖尿病患者の降圧薬ARB/ACE-I
糖尿病患者の降圧薬の第一選択はACE-I、ARBで、目標値 130/80 mmHg以下を目指します。これはACE-IとARBには降圧作用と腎保護作用があるからです。
腎保護作用って?
ARB,ACE-IともにアンジオテンシンⅡの作用をブロックする働きがありますが、このアンジオテンシンⅡの作用のひとつに輸出細動脈を収縮させて糸球体血圧を上昇させGERを正常に保つ作用があります。
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このアンジオテンシンⅡの作用をブロックすることで輸出細動脈の収縮を抑制することができます。従って糸球体血圧を低下させることで腎保護作用を発揮できます。
高血圧自体が毛細血管内皮細胞にダメージを与える因子のひとつですね。血液から尿をこしだす腎臓は毛細血管の集合体の臓器ですから、高血圧を是正することで糸球体を守ることにつながります。高血圧が原因で腎臓の血管に動脈硬化を起こし、腎臓の障害をもたらす疾患に腎硬化症があります。
また、アルブミン尿の抑制にも効果があります。顕性アルブミン尿がある症例でも腎機能障害の進行抑制効果があります。
高度腎機能低下例
しかし、糖尿病腎症の初期では進行抑制が期待されるACE-I/ARBには注意点があります。糖尿病の3大合併症の一つ、糖尿病性腎症は糖尿病罹患歴が長い症例(10年以上)で高度の蛋白尿を呈するようになることが多いですが、このように既に腎機能低下している症例に対しては、ACE-I/ARBの使用は腎機能のさらなる悪化、高K血症に注意が必要です。
慢性腎不全では高K血症をきたしますね。Kは重要な電解質で高K血症は致死的な不整脈を引き起こすのでこれは見逃せません
さらなる悪化ってなに?なぜACE-I/ARBでは高K血症を誘発するの?
進行してしまった腎臓では、正常なネフロン(尿をつくる基本単位)が減少している状態です。ただでさえ十分な量の尿を生成できず、老廃物を捨てられなかったりKを分泌できなかったりしています。この状態で糸球体血圧を下げることはさらに尿の生成を低下させるので老廃物を捨てる腎臓の仕事が果たせず、腎機能の低下をきたします。
腎機能が保たれているときは労わってあげることが大切だけど、進行している状態で休んだらさらに老廃物が体内にたまるんだね…
アンジオテンシンⅡをブロックすることで集合間でNa再吸収/K分泌に作用していたアルドステロンが効きませんので、K分泌が滞り高K血症を助長します。
K分泌は集合管で体内のKを尿に移動させることだね
このように腎不全例では高K血症をきたさないCa拮抗薬を使用します。(βブロッカーも高K血症の危険があるため慎重投与)