統合失調症には、様々な特徴がありました。自我の異常、させられ体験、対話式の幻聴、滅裂思考など。統合失調症の患者のイメージが湧かない方は、

を御覧ください。この記事では、疾患としての統合失調症(Schizophrenia)をみていきます。
目次
統合失調症は脳の病気
統合失調症は、Parkinson病などと同様にれっきとした脳の病気です。ですので、"元から頭がおかしい"や"トチ狂った人格"なのではなく、脳の神経伝達質のバランスが崩れた結果発症する"疾患"です。自我の異常や幻聴、滅裂思考などは病気の症状ですね。
統合失調症の治療薬として、ハロペリドール、クロルプロマジンなどがあります。その病態を知れば、なぜハロペリドール、クロルプロマジンが効くのかが理解できますので、がんばってください。
好発
統合失調症は、思春期から成年期にかけて、若い人を中心に発症します。初発年齢が大切です。15〜30歳の間に集中して"発症"します。統合失調症は、基本的に発症後は薬を飲み続ける疾患ですので、統合失調症の患者は上の世代で見られます。しかし、発症は思春期から成年期に集中するので、50歳で"発症"は考えにくいと捉えましょう。
原因
ドパミン、セロトニンの過剰分泌
脳の神経伝達物質のバランスの異常が原因です。統合失調症の患者では、脳内のドパミン、セロトニンが過剰になっています。脳の場所としては、前頭葉から帯状回にかけて、分泌過剰が起きていると言われています。
症状を2つに大別する
陽性症状-ドパミンの過剰で引き起こされるもの-
ドパミンの産生が過剰になることで引き起こされる症状として、
- 妄想
- 幻聴
などがあります。統合失調症の妄想や幻聴って激しかったですよね?
「壁のむこうで悪口を言っている」「あいつは俺を狙っているんだ」
明らかにおかしいと思いますよね。コチラの症状は気付きやすく、陽性症状と言われます。
陰性症状-セロトニンが過剰で引き起こされるもの-
セロトニンが過剰になった結果引き起こされる症状として、
- 連合弛緩
- 滅裂思考
などがあります。こちらは気づかれにくく陰性症状と言われます。しかし、統合失調症は早期の治療が重要です。はやく見つけてあげるポイントはあるのでしょうか。
まず、連合弛緩と滅裂思考ですが、この2つはどちらも適切に文章を紡げなくなるもので、会話が成り立たなくなります。2つの違いはその程度です。
滅裂思考は、言葉のサラダと表現されるように、言葉はでるものの前後の関係性や文章のつながりがめちゃくちゃです。
連合弛緩は、適切に接続詞が繋げない、文章のつながりが下手になっている状態です。
といった文と文の間に適切な関係あるのが正常ですが、それがうまくできなくなります。具体例は

の「滅裂思考、連合弛緩」のページを御覧ください。
経過
徐々に発症する
統合失調症は、陽性症状も弱く明らかな精神症状を呈する前の、前駆期を経て徐々に発症します(1〜2年)。
統合失調症にそっくりな症状を突然呈した場合は何が考えられるでしょうか?それも中年の方です。「誰かに狙われている」と幻聴が聞こえるなどの統合失調症に特徴的な症状を突然呈した時は覚醒剤中毒の方が疑います。
認知機能障害がQOLに関わる
陽性症状に目が行きがちですが、統合失調症の早期から出現し、徐々に悪化するのが認知機能障害です。遂行能力、問題解決能力、集中力、ワーキングメモリーなどが障害され、社会復帰を目指す上では重要な能力です。妄想や幻覚などの陽性症状だけを治療すれば終わりではありません。
遂行能力の例として料理があります。料理はそこまで複雑な作業のようには見えないかもしれませんが、カレーを作るには、まず材料が必要で、材料を用意して、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、を適切な形に切り、まずは玉ねぎを炒めて…。
と、料理はアレをして次にコレをしてと計画を立てて適切な順序で行う必要があります。
再燃を繰り返し慢性に経過する
症例により経過は様々ですが、多くは再燃を繰り返し、慢性に経過します。発症後5年間が最も再燃が多く、経過の中でも機能的低下が激しいです。早期の治療開始により予後の改善が期待できます。
急性期には陽性症状が多く、慢性期には陰性症状が主体
急性期や一過性の増悪(再燃)時は、わかりやすい症状の陽性症状が目立ちます。
慢性期には陰性症状が主体になり、様々な症状を呈します。
<陰性症状>
- 感情鈍麻
- 自発性の低下
など、感情や意欲の低下を中心とする症状です。
感情鈍麻は
で、いい知らせの時に悲しんだり怒ったり、悪い知らせの時に喜んだりするなど適切な反応ができなくなります。また
治療
薬物治療が最優先
統合失調症は脳の伝達物質ドーパミン、セロトニンの過剰分泌が原因で起こります。
治療薬には、抗精神病薬を用います。(向精神薬と混同しないようにしてください)
抗精神病薬には定形抗精神病薬と非定型抗精神病薬があります。
定形抗精神病薬
定形抗精神病薬は50年以上前に開発され、比較的古い薬です。
定形抗精神病薬には、ハロペリドール、クロルプロマジンがあります。どちらも、脳内のドーパミンのレセプターを強力にブロックするタイプの薬です。ドパミンの過剰が陽性症状を引き起こすと考えられていると書きましたね。ですので、定形抗精神病薬は陽性症状に効果があります。一方で、陰性症状にはあまり効果がなく、むしろ悪化することも有ります。
非定型抗精神病薬
定形抗精神病薬はドパミン受容体遮断効果が強く、陽性症状に効果的でしたが、パーキンソニズムなどの錐体外路症状や高プロラクチン血症が副作用として問題となりました。そのため、ドパミン受容体遮断に加え、セロトニン受容体遮断作用を併せ持つ非定型抗精神病薬が開発されました。代表的なものに
- クエチアピン
- リスペリドン
- オランザピン
などがあります。非定型抗精神病薬は陰性症状や認知機能障害に対してもある程度効果があり、再発予防効果も高いと言われてます。