統合失調症(Schizophrenia)の症候は多様です。
よくされる分類として
- 自我の異常
- 知覚の異常
- 思考の異常
- 意欲の異常
- 感情の異常
が有ります。しかし、これをいくら暗記してもイメージは付きません。統合失調症に特徴的な所見をおさえるが大切です。まずは自我の異常これが理解できれば、ぐっと統合失調症のイメージがわくでしょう。
目次
自我の異常
もう一人の自分がいる
正常な人は、「自分は自分である」と思っていますよね。自分は1人です。統合失調症は簡単に言うと、
統合失調症は自分がもう一人いる疾患
ということが出来ます。正常な人はこう。
もう一人の僕がいる場合はこう。
重症厨二病患者として名を馳せていれば別ですが、いきなりもう一人の僕と会話を始める人がいたら、みなさんおかしいと思いますよね?もう一人の僕をはっきりと感じてなんやかんやされる、それが統合失調症の本幹となる自我の異常です。
以前は精神分裂病と言われていた
以前の表現の方が
精神が分裂する = 自分じゃない人が自分の中にいる
と疾患のイメージはつきやすかったかもしれませんが、表現の問題上、現在では使われません。統合失調症も、言われてみれば
(精神を)統合
することができない(失調)
ということですね。それでは、具体的に自我の異常を見ていきましょう
させられ思考(made thinking)
もう一人の僕になんやかんやされる
させられ思考(作為思考)は、自我の異常で見られるものの総称です。全てはもう一人の僕がなんやかんや悪さすることの具体例です。
させられ体験には
- 思考吹入(しこうすいにゅう)
- 思考干渉
- 思考奪取
- 思考察知
- 思考伝播(しこうでんぱ)
があります。似ているので主語は誰なのかを意識しましょう。
思考吹入 thought insertion
もう一人の僕が変な考えを吹き込んできます。うるさい親みたいですね。
思考干渉 influence of thought
自分が考えていることに対して、もう一人の僕が邪魔をしてきます。
思考奪取 withdrawal of thought
自分が考えていたことが抜き取られてしまう。
「自分の考えが抜き取られます」
思考察知 mind reading
自分の考えは他人に知られている、筒抜けであると感じる。
「言わなくてもわかるでしょう」
思考伝播 broadcasting of thought
こちらは思考察知と混同してしまいやすいので、英語も合わせて覚えましょう。
電波に乗せてもう一人の僕によって、自分の考えが飛んで知れ渡っているという感覚です。
させられ体験
「誰かに操られて勉強しているようだ」「自分はロボットで誰かが自分を操縦しているだけなのだ。」
させられ"思考"と臨床上の意義は同じものですが、思考の異常ではなく、もう一人の自分によって行動させられている状態と捉えられます。自分ではない誰かに"させられる"本幹は同じです。
現実感が湧かない離人症
させられ体験と離人症はどちらも統合失調症でみられるが、似ているので注意が必要。離人症(depersonalization)と明確に区別スべき点は離人症は「自分で考えて自分で行動している」点であることです。
統合失調症 | 離人症 |
もう一人の僕がいて
その僕に行動させられている |
外界と自己の区別が曖昧になってしまうが
自分が考えて行動したと理解している |
統合失調症のイメージはつかめたでしょうか?
次のページでは知覚の異常〜感情の異常まで一気に見ていきますが、もう山を越したようなものです。最後にまとめもあるので頑張ってください。