輸液の種類はあって、何が何だかわかりませんよね。
脱水(dyhydration)と体液量減少(volume depletion)の違いを勉強します。
まず、体液量の分布をおさらいしましょう。
体液量の分布
体液量は、体重の約60%で、その内訳は
- 細胞内に60%
- 細胞外組織に15%(組織間液)
- 血管内に5%(血漿)
存在します。組織間液と血漿を合わせて細胞外液ともいいます。
これはOKでしょう。この認識はとても大切です。
細胞内 | 細胞外(20%) | |
40% | 組織間液 | 血漿 |
15% | 5% |
1/3 × 1/4 = 1/12
血漿の水分のうちの1/12を占める
「どこから何が失われたのか、どこの何が過剰なのか」このような視点を初めのうちは意識しましょう。次にやる脱水はどうでしょうか?
脱水とは細胞内液の減少
脱水(dehydration)とは、細胞内液の減少を指しています。
高ナトリウム血症(高浸透圧血症)の病態でもあります。一般的に、血液と言われる血管内液のナトリウム濃度が高くなった状態と血管外にある組織の細胞内液の減少が同じとはどういうことでしょうか?
水を喪失した結果血液が濃縮される
脱水は電解質を含まない体液(electolyte free water) が喪失された結果、血液が濃縮されます。純粋な水(H2O)が血管内から抜けたから、血液が濃縮されるわけです。
(これに対し、出血は血管内の体液、つまり血液が直接喪失されるので濃度は変わりません)
血液が濃縮されると、血漿浸透圧が上昇し、水が血管内から細胞外へ移動します。その結果、細胞内液の浸透圧も上昇します。(同じ浸透圧になるように拡散で水が移動した)
これが脱水です。まとめると、脱水は
どこから何が?→血管内から水が喪失された
結果、血管内浸透圧が上昇し
どこから何が?→細胞内から水が血管内に移動した
輸液は?
脱水は血管外のみならず、血管内も水が不足しているので利尿がつくまでは
- 電解質を含まない5%ブドウ糖液
- 1/2生理食塩水
細胞外液・内液補給を同時に行うことが目的です。
5%ブドウ糖液は"電解質を含まない水"を補給することができます。電解質を含まない5%ブドウ糖液は細胞内、細胞外に等しく分布することが特徴です。
体液量減少は細胞外液の減少
体液量減少(volume depletion)はは細胞外液が主に減少した場合を指しています。正ナトリウム血症、あるいは低ナトリウム血症です(等張性脱水 or 低張性脱水)。この場合は、血管外液に近いNa濃度を持つ生理食塩水補充が基本になります。
【109H36 改変】
27歳の女性.全身倦怠感と嘔吐とを主訴に来院した.
現病歴:夏の暑い日にジョギングをした.走り終わった後の疲労感がいつもより強く,立ちくらみと悪心とがあり嘔吐したため受診した.
現症:意識レベルはJCSⅠ-1.身長160cm,体重45kg.体温37.3℃.脈拍120/分.血圧90/60mmHg.呼吸数20/分.SpO2 98%(room air).心音と呼吸音とに異常を認めない.頸静脈の怒張と下腿の浮腫とを認めない.
検査所見:尿所見:比重1.030,蛋白(-),糖(-).血液所見:赤血球400万,Hb 13.5g/dL,Ht 39%,白血球9,000,血小板20万.血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL,アルブミン4.0g/dL,AST 20IU/L,ALT 20IU/L,尿素窒素28mg/dL,クレアチニン0.9mg/dL,血糖90mg/dL,総コレステロール200mg/dL,Na 128mEq/L,K 4.0mEq/L,Cl 92mEq/L輸液の組成として適切なのはどれか?
Na+(mEq/L) K+(mEq/L) Cl-(mEq/L) Lactate-(mEq/L) 糖質(%) a 510 0 510 0 0 b 154 0 154 0 0 c 84 20 66 20 3.2 d 35 20 35 20 4.3 e 0 0 0 0 5
高張性脱水(脱水 dehydration) | 正〜低張性脱水(volume depletion) | |
病態 | 水の欠乏
細胞外液浸透圧↑(Na > 150) 細胞内脱水 |
細胞外液 ↓
Na欠乏(低張性脱水) |
症状 | 脱水症状
高Na血症の症状 |
脱水症状
低Na血症の症状 |
治療 | 低張液の輸液 | 等張液の輸液 |
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