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過敏性肺炎って?
過敏性肺炎(HP:hypersensitivity pneumonitis)は環境中の原因物質(真菌、化学物質など)の長期間吸入により感作され惹起されるびまん性肉芽腫性間質性肺炎のことです。
<医師国家試験で問われるポイント>
- 入院で軽快→退院で再発の病歴
- 気管支肺胞洗浄液でTリンパ球著増
- 夏型過敏性肺炎ではCD4/CD8比 ↓
- 夏型過敏性肺炎の原因
- ツ反陰転化
- 血清沈降反応で抗原の同定
抗原を長期間吸入することで異物として認識される
抗原には真菌、細菌、薬剤、異種蛋白、化学物質など様々なものがありますが、原因物質を長期間吸入することにより異物と認識されてしまい肺局所で感作されたリンパ球による特異抗体による免疫反応を起こします。(Ⅲ型アレルギーやⅣ型アレルギー)
急性型は肺間質のびまん性の肉芽腫性病変が中心ですが、慢性型では線維化や蜂巣肺などをきたします。
<経気管支肺生検組織H-E染色>
胸部X線写真でびまん性散布性粒状陰影を認める。
過敏性肺炎の種類
夏型過敏性肺炎(75%)が最も多いが、その他には換気装置肺炎(空調肺,加湿器肺),農夫肺や鳥飼病などがあります。
夏型過敏性肺炎はその名の通り夏(5~10月)に多く、高温多湿な西日本に多く見られます。夏型過敏性肺炎の原因は下記のものが多い。
真菌Trichosporon asahii、Trichosporon mucoides
症状
特定の場所・時期において乾性咳嗽、呼吸困難、発熱などの症状を繰り返すが、環境を変えるだけで症状は軽快するのが特徴である。
ACE↑、ツ反陰転化、好酸球&IgEは正常
過敏性肺炎はⅢ型アレルギーやⅣ型アレルギーなので、好酸球、IgEが上昇しないのは良いだろう(I型アレルギー)
Ⅲ型アレルギー | Ⅳ型アレルギー |
発熱 | 肉芽腫形成 |
症状出現時にツ反陰転化し、症状の軽快とともに再び陽性化する。
ACE↑してツ反陰転化する肉芽腫性疾患は他に思い浮かばないだろうか?
サルコイドーシス
である。
ツ反陰転化する疾患には下記のものがある。
- 過敏性肺炎
- サルコイドーシス
- 粟粒結核
http://kumicho.asia/%E3%83%84%E5%8F%8D%E9%99%B0%E8%BB%A2%E5%8C%96%E3%81%99%E3%82%8B%E7%96%BE%E6%82%A3-1729.html
夏型過敏性肺炎ではCD4/CD8比↑
BALFで著明なTリンパ球の増加を認めるが、過敏性肺炎の種類によってCD4/CD8比の上昇が異なる。過敏性肺炎ではCD8陽性Tリンパ球が増加する。
夏型過敏性肺炎 | 鳥関連過敏性肺炎・農夫肺 |
CD4/CD8 ↓ | CD4/CD8 ↑ |
血清沈降反応試験で抗原の特定
過敏性肺臓炎は産生された抗体(IgG)と大量吸入した抗原により形成された免疫複合体が発症機序に関わる。血清沈降反応試験はⅢ型アレルギーの検査で、特異的な沈降反応の存在により原因を特定できる。
特徴的なエピソード
間質性肺炎なのでfine crackles,A-aDO2の開大を認め、症状としては乾性咳嗽、労作時呼吸困難が多い。
入院で軽快、退院で増悪パターン
【103A24-抜粋】
63歳の男性.労作時呼吸困難を主訴に来院した.7月末から咳と呼吸困難とが出現するようになった.その後出張で約1ヵ月自宅を離れた.その間症状は消失した.自宅に戻ったところ,咳と呼吸困難とが再度出現した.呼吸音にfine cracklesを聴取。PaO2 76Torr,PaCO2 37Torr
【109D29-抜粋】
27歳の男性.強い咳嗽,発熱および呼吸困難を主訴に来院した.2ヵ月前の初夏から咳嗽が出現し次第に増強した.1週前から発熱とともに呼吸困難が出現し,外来にて低酸素血症を認めたため入院となった.入院2日後には症状と低酸素血症とが改善し3日後に退院したが,退院翌日に再び咳嗽,発熱および呼吸困難のために救急外来を受診し,再入院となった.体温38.0℃SpO2 88%(room air).吸気時にfine cracklesを聴取する.白血球11,100(桿状核好中球6%,分葉核好中球75%,好酸球3%,好塩基球1%,単球3%,リンパ球12%),血小板35万.CRP 2.2mg/dL.再入院時の胸部X線写真で両側肺野に淡いスリガラス陰影を認める.気管支肺胞洗浄液所見:細胞数4.2×106/mL(肺胞マクロファージ4%,リンパ球88%,好中球6%,好酸球2%)
【101I54-抜粋】
65歳の女性.繰り返す発熱、咳嗽および呼吸困難のため入院中である.10日前に発熱,咳嗽および呼吸困難のため来院した.胸部X線写真で全肺野に陰影が認められたため,ニューキノロン系薬を処方された.治療開始後1週間経過したが症状が増悪したため入院となった.入院後,血液培養や喀痰培養から原因菌は検出されなかった.ペニシリン系抗菌薬を投与され,5日後には症状および胸部X線写真の所見が改善したため退院となった.しかし,帰宅した翌日に発熱,咳嗽および呼吸困難が再発し,再度入院となった.喫煙歴はない.再入院時,意識は清明.身長153cm,体重53kg.体温38.0℃.脈拍84/分,整.血圧120/70mmHg.呼吸数28/分.SpO2 88%(room air)血液所見:白血球9,800(桿状核好中球9%,分葉核好中球53%,好酸球1%,好塩基球1%,単球5%,リンパ球31%)CRP 4.5mg/dL.動脈血ガス分析(room air):pH 7.48,PaCO2 35Torr,PaO2 60Torr,HCO3- 25mEq/L.
過敏性肺炎の治療
抗原から回避することである。転居や寝具の交換などを勧める。
副腎皮質ステロイドの投与も考慮。