薬を使う以上、薬疹は必ず遭遇します。治療の為に使用した薬剤が患者さんを死に至らしめてはいけませんね。このページでは重症型薬疹のStevens-Johnson症候群とTEN(中毒性表皮壊死症)についてまとめていきます。
初めにStevens-Johnson症候群とTENは同じ病態です。この2つは重症度の違い(びらんの面積)で分類されます。Stevens-Johnson症候群が進展したものがTENです。つまり、この2つの疾患は同一直線状にあると理解してください。
<注意>
病態を理解する上ではStevens-Johnsonの重症型がTENと思えばわかりやすいので、そう説明しましたが厳密には、中毒性表皮壊死症は薬疹の重症型であるのに対し、Stevens-Johnson症候群の原因は薬剤だけでなく、感染なども含まれます。
両者の鑑別点としては、びらんの面積とNikolsky現象の有無です(最後に記述します)
Stevens-Johnson症候群とTEN
病態・原因
表皮・粘膜細胞の著名なアポトーシスにより、皮膚粘膜の壊死、水疱、表皮剥離をきたす疾患です。多くの原因は薬剤で、皮疹は多形滲出性紅斑様(atypical target lesion)です。
多形滲出性紅斑の重症型と捉える
多形滲出性紅斑は皮膚症状のみですが、Stevens-Johnson症候群(SJS)は多形滲出性紅斑に加え、全身症状(発熱)・粘膜症状を認めます。
この粘膜症状が特に大切です。具体的には粘膜症状は目、口、尿路系に出現します。
目が赤い、目が開けられない、食べ物がしみる、排尿時痛などがあります。逆に言えば、重症化をしていないか調べる為に
- 目が赤くないか、目やにがついてないか
- 「食べ物がしみませんか?」
- 「おしっこするとき痛くありませんか?」
また多形滲出性紅斑上に
- びらん
- 水疱
を形成するようになります。びらん、水疱を認めれば、薬疹の中でも重症と判定できますし、SJSとTENの分類の基準にもなる重要な皮疹所見です。参考書では"TENはStevens-Johnson症候群から移行することが多い"と書いてありますが、多形滲出性紅斑、Stevens-Johnson症候群、TENが同一直線状にあると捉えていれば当たり前ですよね。
重症度による分類
なぜ、病態も同じなのにびらんや水疱の面積で分類するのでしょうか?
それは予後が異なるからです。一般にStevens-Johnson症候群の死亡率は5%前後、TENの死亡率は25%程度とされています。熱傷の際、熱傷指数を計算して予後を予測したように、予後の指標になります。実際にTENの写真を見たほうがわかりやすいでしょう。さながら表皮がただれてヤケドのようです。実際にTENでは熱傷に準じた全身管理を行います。
画像引用:http://takeikouhan.jp/ten.html
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鑑別点
TENではNikolsky現象が陽性になります。Nikolsky現象とは一見正常な皮膚を圧迫する、ひっかくなど刺激を加えると表皮が容易に剥離して水疱を形成する現象のことです。
まとめると
びらんの面積とNikolsky現象の有無が鑑別点です。