目次
赤沈とは
赤沈とは赤血球沈降速度(ESR: erythrocyte sedimentation rate)のことで、抗凝固剤を加えた全血中の赤血球が自然凝集により沈降する速度のこと。
基準値を知ろう!
<赤沈の基準値>
男性 | 1~10 mm |
女性 | 2~15 mm |
どのようなときに赤沈が亢進するのかを見ていきましょう。ポイントは電荷と濃度です。
兎に角「荷電に注目」しよう
赤血球が凝集すれば、沈降する速度が高まり赤沈は促進する。
ポイントは荷電に注目すること。
<重要>
+の荷電 | γ-グロブリン、フィブリノゲン |
-の荷電 | 赤血球、アルブミン |
赤血球はマイナスの電荷を帯びている。したがって、赤血球が多い多血症では反発しあって凝集せず、赤沈は遅延する。またフィブリノゲン、グロブリンはプラスに荷電しており、架け橋的存在である。それらが少ないとき赤沈は遅延する。
赤沈 | 病態 | ||
+の荷電 (γ-glb、フィブリノゲン) |
増加 | 亢進 | 炎症 |
減少 | 遅延 | 無ガンマグロブリン血症など | |
-の荷電(RBC,Alb) | 増加 | 遅延 | 多血症 |
減少 | 亢進 | 貧血、低栄養 |
赤沈が亢進する時・遅延する時
<赤沈亢進>
マイナスの荷電をもつ赤血球の沈降速度が亢進するときは
- マイナスの荷電が少なくなった時→貧血、低栄養、妊娠など
- プラスの荷電が多くなった時→炎症時
例。
- 貧血
- 妊婦
- 多くの炎症性疾患
- 多発性骨髄腫
- 原発性マクログロブリン血症
- 高フィブリノゲン血症
<赤沈遅延>
マイナスの荷電をもつ赤血球の沈降速度が亢進するときは
- マイナスの荷電が多くなった時→多血症
- プラスの荷電が少なくなった時→、低フィブリノゲン血症(DIC)、無ガンマグロブリン血症
【97E25】血中の増加が赤沈を亢進させるのはどれか.
a 赤血球
b 白血球
c 血小板
d アルブミン
e フィブリノゲン
炎症、妊娠では赤沈亢進。DICでは赤沈遅延
これはもう覚えてよい程の基礎知識です。
<妊娠で赤沈が亢進する理由>
妊婦さんでは赤血球数は増加します。だったらプラスの荷電が増加するので赤沈は遅延しそうですがそれ以上に循環血漿量の増加が著しいので相対的に水血症の状態になります。これが妊婦の正常の生理的変化です。
<妊婦の生理的変化>
赤血球数も増えるがそれ以上に血漿量の増加が多いので血が薄まる
これに加えて、妊婦では出産に備えてフィブリノゲンを増加させます。出血に備えるんですね。「プラスの電荷をもつフィブリノゲンが増加する、水血症で赤血球のマイナスの電荷が弱まる」この2つの理由から妊婦では赤沈が亢進しているのが正常です。
妊婦で赤沈1桁をみたら何を考えるか?
妊婦さんの場合、赤沈1ケタは安心できる数字ではなく、DICを考える必要があるらしいですね
くらじゃいるさんのコメントより
女性は男性よりも正常高値が高く
男性 | 女性 |
10 | 15~20 |
なおかつ妊婦さんでは通常赤沈が亢進している状態。
妊婦の赤沈の基準値は大体 20〜30と考える。
そんな妊婦さんで赤沈が1ケタだったときは実は赤沈の遅延つまりDICが起きていないか胎盤機能不全が起きていないか注意する必要がある。
コメント
妊婦さんの場合、赤沈1ケタは安心できる数字ではなく、DICを考える必要があるらしいですね