目次
血清補体価の低下をきたす疾患
- SLE(全身性エリテマトーデス)、ループス腎炎
- 膜性増殖性糸球体腎炎
- 急性糸球体腎炎(AGN)
- DIC
- AIHA、寒冷凝集素症
- 悪性リウマチ
- 肝硬変(∵ 補体産生低下)
- コレステロール塞栓症
- クリオグロブリン血症(慢性肝炎、LC、MPGN)
通常、補体は炎症では上昇しますが、免疫複合体を形成する病態や激しすぎる炎症では消耗性に補体価が低下します。
理屈で考えるより、例外的に「血清補体価が低下する疾患」を覚えてしまう方が得策だと思います。これは語呂合わせで丸暗記ではなく病態ごとに分類して覚えることをオススメします。
補体の産生低下 |
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in vitro での補体価低下 |
(HCVとクリオグロブリン血症がMPGNの原因になる知識とリンク) |
補体の消費亢進 | <血液疾患>
DIC、寒冷凝集素症、AIHA <膠原病> SLE、MRA(悪性関節リウマチ) <腎疾患>
(覚え方:急に糸をループに巻くぞう!) <血管炎惹起> コレステロール塞栓 <遺伝性血管性浮腫> Quincke浮腫。C1 inhibitor欠損症により 古典経路の活性化抑制ができずに補体が消費される。 |
補体価が減少する理由
大きく分けて、補体が消耗されるもの、産生が低下するもに分けます。
補体とは肝臓で作られる血清蛋白で特有の経路(古典経路、副経路、レクチン経路など)により増幅・活性化されます。
数が少ないので補体産生が低下する病態を先に考えましょう。
補体産生が低下する病態
肝硬変と先天性補体欠損症があります
補体は肝臓で作られるのでした。ですので、肝臓の線維化が進んでしまった肝硬変では補体産生が落ちてしまいます。また、先天的に補体が無い病態(先天性補体欠損症...そのままですね)では当然補体価は低下します。
in vitro(試験管内)での補体価低下には何がある
混合型クリオグロブリン血症、肝硬変、一部の慢性C型肝炎...があります。
まあまあ。次の「消費されて補体価低下する疾患」の数が多いので、その前に肉ずけさせてください。
肝硬変や自己免疫性肝炎でγ-glbが上昇する
ことは有名な話です。もうひとつ
C型肝炎に膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)が合併する
ことも有名です。ひいてはMPGNの原因のひとつにクリオグロブリン血症があります。
何がいいたいかというと、この3つはセットのように覚えられるということです。C型肝炎患者がMPGNを合併する機序としては、HCVとHCV抗体にIgM分画のリウマトイド因子が加わって免疫複合体(IC)を形成し、重くなって内皮細胞下に沈着してしまうからだと考えられています。このIgM分画のリウマトイド因子がクリオグロブリンの性質を帯びることがあるので3者(HCV肝炎、クリオグロブリン血症、MPGN)は一緒に覚えてしまいましょうよという話です。
<まとめ>
C型肝炎患者
→HCVとHCV抗体にリウマトイド因子が加わって免疫複合体を生じる
→重くなって内皮細胞下に沈着してしまうから膜性増殖性糸球体腎炎を生じる
→リウマトイド因子は実はクリオグロブリンの性質を持っている
→「MPGNの原因にクリオグロブリン血症」の知識とリンクする
「C型肝炎→クリオグロブリン血症→MPGN」
とセットで覚えられる
補体消費亢進するもの
多くはⅢ型アレルギーによるものと考えればOKです。Ⅲ型アレルギーは抗体と抗原が結合したもの(これを免疫複合体といいます)が全身に飛んで各地で補体活性化などを引き起こし様々な症状をきたすもの。
<血液疾患>
DIC、寒冷凝集素症、AIHA
DICでは消耗が激しいので
<膠原病>
SLE、MRA(悪性関節リウマチ)
<腎疾患>
急性糸球体腎炎、ループス腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
(覚え方:急に糸をループに巻くぞう!)
<血管炎惹起>
コレステロール塞栓
<遺伝性血管性浮腫>
Quincke浮腫。C1 inhibitor欠損症により古典経路の活性化抑制ができずに補体が消費される。
腎疾患+補体価低下の覚え方
急に糸でループに巻くぞう!
急に糸で :急性糸球体腎炎
ループに:ループス腎炎
巻くぞう!: 膜性増殖性糸球体腎炎
【107G24】
a 悪性関節リウマチ
b 急性糸球体腎炎
c クリオグロブリン血症
d 全身性エリテマトーデス〈SLE〉
e リウマチ性多発筋痛症
【96B39】血清補体価の低下をきたさないのはどれか.
a 劇症肝炎
b 急性糸球体腎炎
c 全身性エリテマトーデス
d 悪性関節リウマチ
e 成人Still病
【95A59】補体価が高値を示すのはどれか.
a 肝硬変
b 急性糸球体腎炎
c 全身性エリテマトーデス
d 肺炎球菌性肺炎
e 自己免疫性溶血性貧血
クリオグロブリン血症について(おさらい)
クリオグロブリン血症はin vitro(試験管内)での補体価の低下をきたします。IgM分画のリウマトイド因子はクリオグロブリンの性質を持つことがあります。肝臓の疾患でγグロブリンが上昇するものは慢性肝炎、肝硬変が有名でした。また膜性増殖性糸球体腎炎の原因の一つにC型肝炎があることも有名です。これはHCVとHCV抗体にIgM分画のリウマトイド因子が加わって免疫複合体を形成し、重くなって内皮細胞下に沈着することによると考えられています。
クリオグロブリン血症が膜性増殖性糸球体腎炎腎炎の原因になることも納得いきます。
コレステロール塞栓症
コレステロール塞栓症はカテーテル操作後または抗凝固薬服薬などで粥腫が破綻し、コレステロール血栓が飛んで、飛んだ先で炎症を生じるというものです。コレステロール塞栓が飛ぶと血管炎のような臨床像を呈します。腎臓の毛細血管にコレステロール塞栓が飛び、Ⅲ型アレルギーの機序で傷害されれば基底膜がやられ、蛋白尿、血尿を生じます。
悪性リウマチ
悪性関節リウマチは関節リウマチに関節外症状(特に血管炎)を合併した病態。血管炎により補体は消費され,血清補体価は低下します。