好中球には桿状核好中球と分葉核好中球があり成熟するにつれ多角化する。
感染症の急性期、特にバクテリアによる感染の時は、バクテリアをやっつけるために好中球が産生される。そのため未熟な桿状核好中球が増加する。
桿状核 | 分葉核 |
3~10% | 40~70% |
正常では分葉核好中球の割合が最も多いが,感染症などで消費が亢進し寿命が短くなると,桿状好中球の割合が増える。
桿状核の割合が15%を超えると好中球核の左方移動とみなす。つまり、左方移動とは未熟な桿状核好中球の増加を表し、何らかの感染の急性期であることを示す。
【106H33-改変】
74歳の男性.呼吸困難のため搬入された.
現病歴:昨夕37.4℃の発熱があり,咳と痰とを伴っていた
既往歴:生来健康で,昨年の特定健康診査では異常を指摘されていない.
生活歴:喫煙歴はない.飲酒は日本酒1合/日を50年間.
家族歴:妹が胃癌で治療中.
現 症:意識は清明.体温38.1℃.脈拍112/分,整.血圧146/92mmHg.呼吸数28/分.SpO2 96%(2L/分酸素投与下).心音に異常を認めない.座位で右前胸部の下方と右背部の下方にcoarse cracklesを聴取する.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.四肢に浮腫を認めない.
検査所見:血液所見:赤血球380万,Hb 11.9g/dL,Ht 38%,白血球11,000(桿状核好中球25%,分葉核好中球51%,好酸球1%,好塩基球1%,単球4%,リンパ球18%),血小板21万.血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL,アルブミン3.8g/dL,尿素窒素21mg/dL,クレアチニン0.9mg/dL,AST 28IU/L,ALT 16IU/L,LD 370IU/L(基準176~353).CRP 19mg/dL.喀痰Gram染色で,Gram陽性双球菌の白血球による貪食像を多数認める.胸部X線写真で右下肺野に広範な区域性の浸潤影を認める↓
肺炎球菌による細菌性肺炎を疑う。低酸素血症により呼吸困難を呈しており、呼吸数28回/分と増加している中でSpO2 92%(2L酸素投与下)。
↓
発熱、炎症反応高値、WBC↑(桿状核好中球25%,分葉核好中球51%)
桿状核の割合が15%を超えており好中球核の左方移動を認める。