川崎病の症状と治療について学ぼう

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川崎病(Kawasaki disease)は、主に乳幼児に見られる何らかの感染に引き続く全身の血管炎により様々な症状を呈する疾患である。

川崎病は感染症ではないので、伝染しない

川崎病の別名MCLSを知ろう

別名MCLS(mucocutaneous lymph node syndrome)と呼ばれ、直訳では「皮膚粘膜(結膜)・リンパ節症候群」と言われる。

えさきち
重要な症状として両側眼球結膜の充血、非化膿性頸部リンパ節腫脹、口唇発赤、苺舌がありますが、これらはMCLSの病名とリンクするのでMCLSの呼称も是非知っておきましょう
くみちょう
眼球結膜や口腔内は体表に接する皮膚粘膜で、頸部リンパ節腫脹も目立つ症状だね!MCLSという別名を覚えたら便利そう!

川崎病の多彩な症状

症状が多彩で主要症状と参考事項に分けられる。

えさきち
詳しくは「川崎病診断の手引き」を御覧ください。ここでは川崎病の症状の中で重要と思われるものだけに言及します。
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主要症状

主要症状には

  1. 5日以上続く発熱
  2. 四肢末端の変化
  3. 不定形発疹
  4. 両側眼球結膜の充血
  5. 口唇の紅潮、苺舌、口腔粘膜のびまん性発赤
  6. 急性期における有痛性非化膿性頸部リンパ節腫脹

がある。

発熱と両側眼球結膜充血は全員!

発熱 + 両側眼球結膜充血(100% 症候)

医師国家試験95D21より

医師国家試験95D21より

主要症状の中でもまずはこの2つ。発熱は5日以上続く発熱である。

眼球結膜の毛細血管の拡張・充血を認め、滲出性の変化や眼脂はないことが重要

えさきち
眼脂が無いことは、MCLSの鑑別疾患である麻疹(はしか)との鑑別点です。乳幼児に熱と発疹が出現したら麻疹は鑑別にあげなければなりません。血液所見での鑑別点として、MCLSでは白血球数が増加するのに対し、麻疹では白血球数が減少することも有用です。

四肢末端の変化(パンパン→落屑)

四肢末端の変化として

急性期:手足の硬性浮腫 + 紅斑

回復期: 指先からの膜様落屑

医師国家試験95D21より

医師国家試験95D21より

がある。

くみちょう
パンパン!
えさきち
川崎病では発症数日以内に硬性浮腫が現れます。一般的な浮腫と異なり、圧迫しても圧痕を残さないことがポイントです。

不定形発疹は紅斑のみ

不定形発疹は発熱後3〜4日後に出現し、体幹を中心に紅斑を認める。水疱や痂皮を形成することはまず無く、BCG接種部位に限局した紅斑を認めることがある。

体幹を中心に広がる紅斑(不定形発疹)

体幹を中心に広がる紅斑(不定形発疹)

引用 http://www.yokohama.riken.jp/openday2012W/event/seminar/index.html

100A6よりBCG接種部位に限局する紅斑

100A6よりBCG接種部位に限局する紅斑

口腔粘膜がやられる...

主要症状の一つ

  • 口唇の紅潮
  • 苺舌
  • 口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
は口腔粘膜がやられたものと考えるとわかりやすい。
103D39

103D39より口唇の紅潮

95D21

95D21より 苺舌

急性期のいた〜い頸部リンパ節腫脹

急性期において有痛性の非化膿性頸部リンパ節腫脹を認める。

川崎病のピークである1歳の児はもちろん言葉で痛いと表現することは出来ない。「有痛性」であることを正しく知っていれば、触れてみて痛がるかを確認すればよい。

非化膿性であることを確認するにはエコー所見が重要である。化膿性の腫脹であれば化膿部位が球状に腫れ上がるのに対し、血管炎である川崎病ではリンパ節が数珠状に腫大する。

エコー所見が非化膿性リンパ節腫脹であることが川崎病の疑いを強める所見となる。

参考事項

参考事項は一部紹介する。

  • 冠動脈瘤
  • 心陰影の拡大・石灰化(Xp)
  • WBC↑
  • 血小板増加、赤沈亢進、CRP↑
  • BCG接種部位の発赤・痂皮形成

冠動脈瘤は予後に直結

冠動脈瘤の頻度は1~2%と言われる。頻度自体は多くはないが冠動脈瘤は予後に直結し、冠動脈瘤がなければ川崎病の予後は良好である。治療も冠動脈瘤障害予防が最大の目的である。

川崎病は主要症状6つの打ち5つ以上認められれば川崎病と診断することになっているが、

主要症状が4つしか認められなくても断層心エコーや心血管造影で冠動脈瘤が確認され、他の疾患が除外できれば川崎病とする。

鑑別疾患アデノウイルス感染症

アデノウイルスによる咽頭結膜熱では結膜充血に眼脂を伴い硬性浮腫がない。

白血球数増加は麻疹との鑑別点

前述のとおり白血球数は増加し、これは白血球数が減少する麻疹との鑑別点である。

血小板数は増加し、赤沈亢進、CRPも陽性となる。

症状としては麻疹では鼻汁・咳嗽などのカタル症状を認め、硬性浮腫・頸部リンパ節腫脹がないこと参考になる。

川崎病の治療

アスピリン + γ-グロブリンの超大量静脈投与

が基本方針である。

川崎病自体は治療を受けなくても1〜2週間で治まることが多いが、冠動脈瘤の合併予防が治療の肝となる。

アスピリンは冠動脈瘤に対してリスク激減することが知られている。(解熱目的ではない)

γ-グロブリン超大量静注は発熱などの急性期の症状の改善のみならず、冠動脈瘤の発生を防止する。

くみちょう
超?

γ-グロブリン超大量静脈投与は具体的には 1~2 g/kg/日を指す。

近年MCLSの新しい治療法として、γ-グロブリン不応例に対する早期ステロイド投与の有効性が認められた。(RAISE study)

小児にステロイドはなるべく使いたくない心情はあるが、病態が血管炎であることを考えればその有効性にも納得がいく。しかし、血栓形成を促進するため重症例以外は慎重投与となる。

【98C13-15】

2歳1ヵ月の男児.発熱と発疹とを主訴に来院した.
現病歴2日前から38.5~39℃の発熱と体幹部の紅斑とが出現し,近医で両眼と口唇との異常を指摘され紹介入院した.今朝から左頸部を触れると強く啼泣する.嘔吐はない
→発熱と非定型発疹、両側眼球結膜の充血、口腔粘膜病変、有痛性の頸部リンパ節腫脹
現 症:意識は清明.身長83cm,体重18kg.体温38.8℃.脈拍120/分,整.左頸部に径3.5cmの腫瘤があり痛がって首を動かさない.皮膚は腹部から腰部にかけ大小さまざまな紅斑を認める.聴診では心雑音なく,呼吸音に異常を認めない.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.口腔粘膜はびまん性に発赤している.右眼の写真(A)と口唇の写真(B)とを次に示す.
検査所見:血液所見:赤沈45mm/1時間,赤血球410万,Hb 12.5g/dL,Ht 35%,白血球15,000(桿状核好中球7%,分葉核好中球56%,好酸球2%,好塩基球1%,単球5%,リンパ球29%),血小板30万.血清生化学所見:総蛋白7.3g/dL,アルブミン3.5g/dL,総ビリルビン0.4mg/dL,AST 55単位,ALT 60単位,LD 550単位(基準176~353).免疫学所見:CRP 12.5mg/dL,ASO 250単位(基準250以下).胸部X線写真と心電図とに異常を認めない.
98c013-015a
98c013-015b
川崎病まとめ
  • 乳幼児に好発(1歳がピーク。4歳未満に見られやすい)
  • MCLS 粘膜・皮膚・リンパ節症候群ともいわれる
  • 何らかの感染に引き続く全身の血管炎である
  • 川崎病は通常伝染しない
  • 症状が多彩で「川崎病診断の手引き」を参照することが重要である
  • 5日以上続く発熱 + 両側眼球結膜の充血
  • 不定形発疹
  • 急性期における有痛性頸部リンパ節腫脹
  • 四肢末端の変化(硬性浮腫→落屑)
  • 口腔粘膜病変(口唇の紅潮、苺舌など)
  • 主要症状以外で大切な所見は冠動脈瘤
  • 治療はアスピリン+γ-グロブリン超大量静脈投与
  • 近年、早期のステロイドの有効性が確認された
臨床実習の傍ら、Webサービスを運営している医学生。将来の夢は学校をつくること。琴線を記録するサービス kotonohaを製作しました。(俺、この戦争が終わったらスタートアップするんだ...)
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