アレルギー性気管支肺アスペルギルス症ってどんな病気だろう

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アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は、気管支に定着したアスペルギルスによるアレルギー反応によって喘息、発熱、茶褐色の粘性痰を生じる病態。

ABPA:allergic bronchopulmonary aspergillosis

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アレルギー反応が悪さをしている

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は、"アスペルギルス"と書いてあるので言葉尻からアスペルギルスが悪さをしていると思いがちですが、アスペルギルス自体が悪さをしているわけでなくアスペルギルスによるアレルギー性反応による症状です。病名の通りじゃないかとおもわれるかもしれませんがしっかり区別してください。喘息の既往があるなど何らかのアレルギー素因を有する方に生じやすい事が特徴です。Ⅰ型、Ⅲ型アレルギーと言われています。

アスペルギルスが悪さをするのは侵襲性肺アスペルギルス症と言われ、免疫力の低下した易感染性宿主(immunocompromised host)に生じる急性で致命的な肺炎です。

アスペルギルスは真菌(カビ)の一種で、通気口や空気中の埃などに存在しアスペルギルス属の胞子は環境中に広く存在します。殆どのヒトが毎日吸引していますが免疫力が正常な人はアスペルギルスを吸引しても感染はしません。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の原因のほとんどはAspergillus fumigatus(アスペルギルス・フミガタス)です。

症状は喘息・発熱・茶褐色の粘性痰

前述の通り、喘息の既往がある人に生じることから

気管支喘息で治療中の患者に発熱と茶褐色の粘性痰

を生じた場合はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症を鑑別に挙げます。

検査所見

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症に特徴的な検査所見として以下のものが有ります。

  • 血液検査で好酸球、IgE、IgGの上昇( Ⅰ型アレルギー)
  • 胸部X線で移動性の肺浸潤影を認める
  • 胸部CTで中枢性の気管支拡張を認める

<エピソード>

54歳女性。2ヶ月前から発熱と茶褐色の喀痰があった。5年前から気管支喘息で治療中である。体温37.8℃、脈拍88/分、整。胸部聴診で全肺野にwheezeを聴取する。腹部および神経学的所見に異常は認めない。赤沈68mm/h,血液検査所見:白血球12,600(好中球44%、好酸球38%、単球1%、リンパ球17%)、IgE 3,600  IU/mL(基準 250未満)。胸部X線では肺の浸潤影を認める。胸部単純CTを以下に示す。

中枢性気管支拡張

中枢性気管支拡張

喘息の既往があって、好酸球増多...EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)によく似た病歴です。これに多発単神経炎を伴えば好酸球性多発血管炎性肉芽腫症を疑います。

ANCA関連血管炎の鑑別。顕微鏡的多発血管炎(MPA)と好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)を中心に!
ANCA関連血管炎とは、血管炎症候群のうちANCA(抗好中球細胞質抗体)が陽性であるものである。ANCA関連血管炎には MPA 顕...

治療は副腎皮質ステロイドの全身投与

繰り返しますがアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の患者の多くは気管支喘息を患っています。喘息は"吸入"副腎皮質ステロイドを軸に定期的に治療を受ければ良好にコントロール出来ることが多いですが、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の喘息は難治性です。進行すると常に息切れや呼吸困難をきたすようになります。

治療は副腎皮質ステロイドの全身投与です(吸入ではありません)

【104E53】
36歳の女性.2日前から出現した呼吸困難と茶褐色の喀痰とを主訴に来院した.半年前から時々喘鳴を伴う呼吸困難と咳嗽とが発作性に出現し,自宅近くの診療所で気管支拡張薬と副腎皮質ステロイド吸入薬とを処方されていた.意識は清明.体温37.0℃.脈拍96/分,整.血圧114/68mmHg.全肺野にwheezesを聴取する.赤沈30mm/1時間.血液所見:赤血球390万,Hb 11.2g/dL,Ht 37%,白血球11,000(桿状核好中球3%,分葉核好中球41%,好酸球28%,好塩基球1%,単球2%,リンパ球25%),血小板32万.血液生化学所見に異常を認めない.胸部X線写真(A)と経気管支肺生検組織のH-E染色標本(B)とを次に示す.

104E53A

104E53A

104e53b

104e53b

【98D15】

34歳の男性.発熱,咳および喀痰を訴えて来院した.小児期から喘息発作を繰り返している.2週前から38.0℃の発熱があり,咳と少量の膿性痰とを伴っている.胸部聴診で右肺にwheezesを聴取する.血液所見:白血球21,000(好中球28%,好酸球52%,単球5%,リンパ球15%).血清生化学所見:IgG 1,450mg/dL(基準960~1,960),IgM 352mg/dL(基準65~350),IgE 662IU/mL(基準250以下).Aspergillus fumigatusに対する血清沈降抗体陽性.喀出された気管支の鋳型様の栓子からAspergillus fumigatusが分離された.胸部X線写真で右中肺野に浸潤影を認める.
最も適切な治療法はどれか
a 経口副腎皮質ステロイド薬投与
b 吸入副腎皮質ステロイド薬投与
c 経口抗真菌薬投与
d 抗真菌薬の気管内注入
e 吸入気管支拡張薬投与

→正答: a

bは気管支喘息の長期コントロールの治療です。難治性のアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の喘息症状には、経口副腎皮質ステロイドを用います。抗菌薬投与は必要ありません。(Aspergillus fumigatusは環境中に多数存在するため)

問題文中にあった「Aspergillus fumigatusに対する血清沈降抗体陽性」は確定診断です。特異的なIgG抗体を認めているからです。他の確定診断方法として喀痰のGrocott染色でアスペルギルスを同定する方法があります。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
      • 気管支に定着したアスペルギルスに対するアレルギー反応が原因
      • アスペルギルス自体が悪さをしているわけではない
      • Ⅰ型、Ⅲ型アレルギーの機序が関係
      • 喘息の既往がある人に生じやすい
      • アレルギーの原因菌はAspergillus fumigatus
      • 症状は喘息発作、発熱、茶褐色の粘性痰
      • 血液検査で好酸球、IgE、IgGの上昇( Ⅰ型アレルギー)
      • 気管支のアレルギー性疾患→閉塞性障害を呈する(喘息を想起)
      • 胸部X線で移動性の肺浸潤影を認める
      • 胸部CTで中枢性の気管支拡張を認める
      • 治療は経口副腎皮質ステロイド
      • アスペルギルスに対する沈降抗体陽性、喀痰のGrocott染色で同定が確定診断

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