SIADHについて
SIADH
syndrome of inappropriate secretion of ADH
バソプレッシン分泌過剰症
SIADHでは低浸透圧血症(血漿浸透圧 < 280mOsm/kg)であるのに、ADHが不適切に分泌され続ける病態で、尿浸透圧(300mOsm/kg) > 血漿浸透圧(280mOsm/kg) となる。
- 低ナトリウム血症(低浸透圧血症)
- 尿浸透圧 > 血漿浸透圧
- 浮腫、脱水を認めない
- 血漿バソプレシンが測定可能
"ADHが不適切に分泌され続ける"のには殆どの場合原因がある。つまり、原因となる基礎疾患や薬剤の使用歴が存在する。SIADHと他の低Na血症をきたす疾患と鑑別することだけでなく、SIADHの原因究明が重要になる。
このページでは
SIADHの低Na血症の鑑別疾患について
学ぶ。
SIADHでの低Na血症を理解する
低Na血症、ひいては浸透圧は
水とNaの量で考える
のがよい。一口に低Na血症といっても
- 水↓ かつ Na↓↓↓ (水も減少するがNaの減りが著しい。全体の体液量は減少)
- 水↑ かつ Na ↓(水が貯留した分Naが減って全体の体液量としては不変)
- 水↑↑↑ かつ Na ↑ (水が貯留し、Naも貯留。全体の体液量増加)
などのバリエーションがあり、SIADHは水↑ かつ Na ↓の
全体の体液量としては不変タイプの低Na血症
である。
<比で表す>
正常の状態を水:Na = 5:5 合わせて10を正常とすると、
SIADHの場合、
水:Na = 6 : 4
のように合わせて10は不変だが水が貯留している。
鑑別すべきは浮腫・脱水のない低Na血症
なぜ脱水(-)、浮腫(-)の低Na血症になるかというとSIADHのポイントである
病態であるからだ。
本来ならば、低Na血症を補正しようと尿中Na排泄を落として体内にNaをとどめるべきだが、水が貯留により腎血流量(GFR↑)が増加しRAA系抑制され尿中Na排泄が落ちない。
このような浮腫・脱水のない低Na血症を呈する疾患として
- 副腎皮質機能低下(グルココルチコイド欠乏)←水利尿不全による低Na血症
- 甲状腺機能低下←腎における水の排泄障害とされる。浮腫性疾患に類似した低Na血症
がある。
治療の基本
SIADHの治療の基本は水制限である
病態が"水を再吸収しすぎてしまう"のを考えればよい。
ちなみに、SIADHの真逆の病態である尿崩症(ADH分泌低下or不応)の治療は
- 5%ブドウ糖液(電解質を含まない純粋な水を補充する目的)
- デスモプレシン(バソプレシンV2受容体刺激薬)