原発性胆汁性肝硬変PBCは中年女性に好発する慢性非化膿性破壊性胆管炎による慢性の「肝内」胆汁うっ滞をきたす疾患。
※疾患名の「肝硬変」は診断時に肝硬変になっているわけではなく、進行すると肝硬変を呈すること移行することから
診断時、多くは無症状で肝機能異常を指摘され発見されることが多い。症候性のものでは以下所見を認めます
- 黄疸に先行する皮膚掻痒感←ポイント
- 黄疸
- 皮膚黄色腫(脂質異常症による)
「皮膚掻痒感」の原因は血中に漏れ出した胆汁酸です。肝疾患の中で最も掻痒感が強いと言われ、無黄疸期にも認めることに注意しましょう。
中年女性の(黄疸に先行する)皮膚掻痒感といえばPBCをまず思い浮かべられるようにしましょう
【なぜ胆汁が血中に漏れ出るのか】
PBCでは肝内の細い胆管を中心に単球系が浸潤し胆管炎を生じます。(非化膿性破壊性胆管炎)
細い胆管を中心に胆道炎
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胆道閉塞による胆汁酸の血中漏出
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皮膚掻痒感(胆汁血液シャント)
【103I77】
56歳の女性.皮膚瘙痒感を主訴に来院した.3年前の健康診断で肝機能異常を指摘されたが放置していた.輸血歴はない.服薬歴に特記すべきことはない.飲酒は機会飲酒.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.血液所見:赤血球340万,Hb 11.6g/dL,血小板14万.血液生化学所見:総蛋白7.7g/dL,アルブミン4.2g/dL,総ビリルビン1.8mg/dL,AST 56IU/L,ALT 65IU/L,ALP 935IU/L(基準115~359),γ-GTP 616IU/L(基準8~50).免疫学所見:HBs抗原陰性,HCV抗体陰性.→中年女性で主訴が皮膚掻痒感。(黄疸(−) 、T.bilが少なくとも2 mg/dl以上ないと黄疸は認めない)肝機能異常が認められる(AST,ALT↑)が、それに比して胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇が明らか。
えさきち「 トランスアミナーゼに比して胆道系酵素の上昇が目立つ」のはポイントです肝生検組織のH-E染色標本を次に示す.
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PBC。国家試験頻出の自己抗体→抗ミトコンドリア抗体
<肝生検所見>
- 慢性非化膿性破壊性胆管炎
- 小葉間胆管減少
- Glisson鞘線維化
慢性非化膿性破壊性胆管炎
chronic non-supprative destructive cholangitis;CNSDC
【96C10-12 抜粋】
52歳の女性.黄疸を主訴に来院した.
現病歴:15年前に健康診断で肝機能の異常を指摘された.7年前から全身の瘙痒感が出現し,2年前から黄疸が出現した.1年前には吐血があり,食道静脈瘤に対して硬化療法を受けた.→中年女性。長年の肝機能異常、黄疸に先行する全身の掻痒感。肝硬変まで進展していそう。
現 症:身長150cm,体重52kg.脈拍64/分,整.血圧108/58mmHg.皮膚と眼球結膜とに黄疸を認める.腹水と下腿前面の浮腫とを認める.
検査所見:尿所見:蛋白(-),糖(-).血液所見:赤血球369万,Hb 11.8g/dL,Ht 36%,白血球3,800,血小板8万,プロトロンビン時間〈PT〉35%(基準80~120).血清生化学所見:総蛋白7.2g/dL,アルブミン2.8g/dL,IgA 630mg/dL(基準110~410),IgG 3,178mg/dL(基準960~1,960),IgM 641mg/dL(基準65~350),クレアチニン0.6mg/dL,総ビリルビン20.7mg/dL,直接ビリルビン18.5mg/dL,AST 123単位,ALT 75単位,ALP 512単位(基準260以下),γ-GTP 112単位(基準8~50),コリンエステラーゼ106単位(基準400~800),Na 135mEq/L,K 4.1mEq/L,Cl 100mEq/L.免疫学所見:HIV抗体陰性,HBs抗原・抗体陰性,HCV抗体陰性,抗ミトコンドリア抗体陽性,AFP 2ng/mL(基準20以下).→肝硬変まで進展したPBC
[C012] この患者に適切な外科的治療はどれか.
[C011] この患者で予想される肝病理組織所見はどれか.2つ選べ.
a 中心静脈の拡張
b 小葉内の著明な好中球浸潤
c 小葉間胆管の減少
d 胆管周囲の輪状線維化
e Glisson鞘の線維化
a 食道離断術
b 脾摘出術
c 総胆管空腸吻合術
d 左胃静脈下大静脈吻合術
e 肝移植
PBCの抗ミトコンドリア抗体の覚え方
抗ミトコンドリア抗体(AMA)はPBCの約90%に認め、特異的な抗体です。
抗ミトコンドリア抗体に加え、PBCではIgMが↑することがポイントです。
【98B14】
41歳の女性.3ヵ月前から皮膚瘙痒感があり来院した.2年前に人間ドックで肝障害を指摘されたことがある.身長152cm,体重51kg.血清生化学所見:総蛋白8.3g/dL,トリグリセリド130mg/dL,AST 78単位,ALT 94単位,ALP 724単位(基準260以下),γ-GTP 340単位(基準8~50),IgA 350mg/dL(基準110~410),IgG 1,850mg/dL(基準960~1,960),IgM 525mg/dL(基準65~350).免疫学所見:HBs抗原陰性,HCV抗体陰性,抗核抗体陰性
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中年女性。皮膚掻痒感。トランスアミナーゼよりも胆道系酵素の逸脱が激しく、IgM↑
その他の検査所見
胆汁うっ滞 | 胆道系酵素(ALP、LAP、γ−GTP)↑
高コレステロール血症(胆汁排泄障害のため) →骨粗鬆症(vit.D吸収障害) |
免疫 | 抗ミトコンドリア抗体
IgM↑(ミトコンドリアのMと覚える) |
銅代謝 | 【Cuの胆汁への排泄低下による】
血清・尿中Cu↑ 血中セルロプラスミン↑ 肝内Cu含有量↑ |
【合併症】
AIHの合併症(慢性甲状腺炎、SjS、関節リウマチ)+骨粗鬆症+脂質異常症
治療はUDCA(ウルソデオキシコール酸)が第一選択。皮膚掻痒感に対してはコレスチラミン。
進行例では肝移植の適応
AIHとは異なりステロイドは禁忌(長期投与は骨粗鬆症の増悪を招くため)
原発性胆汁性肝硬変 |
「中年女性、皮膚掻痒感、トランスアミナーゼに比して胆道系酵素の上昇が目立つ」はPBCを疑う
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コメント
初めまして。
私も、111回の国家試験に向けて勉強している九州の田舎の医学生です。
サイト拝見させていただきました。
私も将来、医学教育に関わりたいなと思っているので、非常に興味深くサイトを拝見させていただきました!また、botとkotonohaの方も拝見しました!とても、インタレスティングですね!
実は、私、将来は医学教育に携わりたいと考えており、学内で同学年や後輩相手に日々レクチャーを行なっております。そのため、Shunsukeさんのサイトに非常に興味を持ちました。(私は、国家試験向けというより、「機序をわかりやすく考えること」に主眼を置いて講義を行なっています。)
今は、国試に向けて忙しいですが、また国試が終わったらこのサイトをゆっくり拝見したいと思います。
Shunsukeさんもお忙しいと思いますが、botの運営など応援しています!
同じ受験生ですか、嬉しいコメントありがとうございます。
botも随時新作を発信してるので、参考にされると幸いです。
まつおさんは医学教育に携わりたい考えがあり、現在進行形で行動に移されてるのですね。良いですね。
まつおさんの様なひとはこれからもアイデアを実現するために、何かしらの行動ができる稀有な存在だと思いますよ。医者なることはゴールではなく、むしろスタートで、使い物になるのも一苦労な職業です。
これからバタバタの人生だと思いますが、教育に携わりたい気持ちは忘れないようにしたいですね。
2月11日の111回まで目前ですね、お互い合格できるように祈ってます。
コメントありがとうございます。
早速、botをフォローさせていただきました。白い服の人が黒板に向かっている写真のアカウントです。
ツイッターに慣れていないので・・・できているか自信がないのですが・・・。
Shunsukeさんも私から見たら、非常に稀な存在だと思います。サイト運営や、発信力は尊敬に値します。Shunsukeさんの運営から色々学ばせていただきたいと思います。
そうですね。これからがいよいよ追い込みですが、合格目指して走り抜けましょう!botの方も楽しみにしています。