医師国家試験問題において肺癌のpapanicolau染色で診断させる問題がある。
角化傾向を示す細胞は黄色(オレンジ色)に染まり、それ以外は青色
病歴を拾えるようになることが診断への第一歩です。その上でパパニコロー染色をしっかり見れるようになりたいですね。
扁平上皮癌
角化傾向が強い扁平上皮癌では、Papanicolau染色で細胞質がオレンジ色に染色されます。オレンジ色のほか角化の程度によって緑色に染色される。形はオタマジャクシ形と表現されます。
ここで医師国家試験89D8を見てみましょう。
正常とくらべて扁平上皮癌はどうでしょうか?病歴にも注目してください。
【108G48】
75歳の男性.血痰を主訴に来院した.1ヵ月前から血痰を自覚しているため受診した.65歳時に胃癌(早期癌)の手術の既往がある.喫煙は30本/日を55年間.家族歴に特記すべきことはない.身長165cm,体重55kg.脈拍72/分,整.血圧144/80mmHg.呼吸数20/分.SpO295%(room air).心音と呼吸音とに異常を認めない.胸部X線写真と胸部単純CTで軽度の肺気腫を認める.喀痰細胞診のPapanicolaou染色標本を次に示す.
→高齢男性。血痰が症状としてあり、長期間の喫煙歴あり。「喀痰」細胞診から中枢性の肺病変を想起(扁平上皮癌、小細胞癌)引用 医師国家試験108G48
核は大小不同で不整、クロマチンが豊富などの特徴。
【90D32】62歳の男性.血痰を主訴として来院した.胸部X線写真に異常を認めない.喀痰細胞診Papanicolaou染色標本を示す
【110A34 抜粋】
62歳の男性.意識障害を主訴に来院した.1ヵ月前から咳嗽が出現し,血痰を認めたため5日前に受診した.喫煙は40本/日を42年間.初診時の血液所見:赤血球374万,Hb 11.1g/dL,Ht 34%,白血球5,600,血小板14万.血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL,アルブミン2.5g/dL,総ビリルビン0.6mg/dL,AST 35IU/L,ALT 38IU/L,LD 552IU/L(基準176〜353),尿素窒素30mg/dL,クレアチニン2.1mg/dL,血糖96mg/dL,Na 145mEq/L,K 4.8mEq/L,Cl 108mEq/L,Ca 10.0mg/dL.心電図でQTc短縮を認めた
→咳嗽、血痰、喫煙歴→扁平上皮癌、小細胞癌を想起。
Alb< 4g/dlなので補正する。補正Ca= 実測Ca10+(4-Alb2.5) =11.5 mg/dl(Ca:基準値 8.6〜10.2 ハロートニー)より高Ca血症。
意識障害は高Ca血症による。高Ca血症+原発性肺癌ときたら扁平上皮癌のPTHrPが原因。
初診時の胸部X線写真(A)と喀痰細胞診のPapanicolaou染色標本(B)とを次に示す.精密検査目的で入院予約を行い帰宅を指示した.2日前から倦怠感,食欲不振,口渇および便秘が出現し,つじつまの合わない会話をするようになった.
N/C比が大きく、粗大顆粒状のクロマチンを認める。
オレンジ色に染色されていないので今までの扁平上皮癌とは似ていませんが、リンパ球様でもないですし...
肺扁平上皮癌はPTHrP(parathyroid hormone-related protein)産生することにより高Ca血症をきたすことがあることも知っておこう。
腺癌
濃染した核があり、N/C比の大きながん細胞が集塊を形成する。
Keywordはぶどうの房状!
腺癌の腫瘍マーカーにはSLX,CEAがありますがこれらは細胞接着因子であり、腺癌は細胞表面に細胞接着因子が発現し、前後左右にと3次元の方向に増殖します。周囲を巻き込みながら密に増殖していきます。ですから、小細胞癌と一見似ていますが、パラパラしておらず集塊を形成します。まさにぶどうの房!
【87E7】
61歳の男性.検診で異常を指摘され来院した.胸部X線写真(A)と内視鏡的病巣擦過細胞診Papanicolaou染色標本(B)とを次に示す.
↓
自覚症状なし(腺癌は初期症状に乏しい)。喀痰細胞診ではない!(腺癌は末梢に発生)
↓
Xpでは右中肺野外側に円形腫瘤影
ぶどうの房状、集塊形成
↓
腺癌
細胞質がpapanicolaou染色で染まり、核は偏在し核小体が目立つことが多い。
引用 医師国家試験87E7
小細胞癌
小型で細胞質が乏しくN/C比が大きい細胞の集簇または散見する。
【106I74 抜粋】
72歳の男性.血痰を主訴に来院した.2ヵ月前から時々血痰が出ることに気付いていた.喫煙歴は20本/日を52年間.身長173cm,体重70kg.体温36.8℃.脈拍60/分,整.血圧128/64mmHg.呼吸数16/分.SpO2 97%(room air).心音と呼吸音とに異常を認めない.胸部X線写真(A),胸部造影CT(B)
→肺門部の腫瘤陰影(中枢型)
および喀痰細胞診Papanicolaou染色標本(C)を次に示す.
引用 医師国家試験106I74
【107A29抜粋】
60歳の女性.咳嗽を主訴に来院した.6ヵ月前に人間ドックで異常なしと診断されたが,1ヵ月前から咳嗽が出現し,改善しないため受診した.喫煙は20本/日を40年間.意識は清明.身長158cm,体重57kg.体温36.2℃.脈拍64/分,整.血圧134/82mmHg.呼吸数20/分.SpO2 96%(room air).頸部リンパ節を触知しない.心音と呼吸音とに異常を認めない.血液所見:赤血球418万,Hb 12.9g/dL,Ht 40%,白血球4,600,血小板15万.血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL,アルブミン3.5g/dL,AST 30IU/L,ALT 28IU/L.胸部X線写真(A),胸部造影CT(B),及びPapanicolaou染色による喀痰細胞診(C)を次に示す.全身検索で遠隔転移を認めない.
引用 医師国家試験 107A29
【99F46】
60歳の男性.呼吸困難を主訴に来院した.身体所見では,顔面,頸部および右上肢に腫脹が認められる.胸部X線写真(A)と喀痰細胞診Papanicolaou染色標本(B)とを次に示す.
Xp→右肺門部に腫瘤陰影。身体所見は上大静脈症候群。
えさきち一見腺癌と似ていますが、広がりが2次元で細胞同士の間に隙間があります。腺癌はぶどうの房状に「お互いが重なり合って」3次元的な広がりを見せています
【87E8】
65歳の男性.3ヵ月前から持続する咳,痰を主訴として来院した.精査によって肺癌と診断された.胸部X線写真(A)と喀痰細胞診Papanicolaou染色標本(B)とを次に示す.↓
左の中肺野に腫瘤陰影。パパニコロー染色ではリンパ球様のN/C比の高い細胞が散見。
【110D43 抜粋】
72歳の女性.咳嗽を主訴に来院した.1ヵ月前から咳嗽が出現し,自宅近くの診療所で投薬を受けたが改善しないため受診した.喫煙は20本/日を50年間.身長150cm,体重50kg.体温36.5℃.脈拍72/分,整.血圧104/80mmHg.呼吸数18/分.SpO2 94%(room air).呼吸音は右側でやや減弱している.血液所見:赤血球422万,白血球8,800,血小板18万.血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL,アルブミン3.2g/dL,総ビリルビン1.1mg/dL,AST 28IU/L,ALT 16IU/L,ALP 320IU/L(基準115〜359),γ-GTP 23IU/L(基準8〜50).来院時の胸部X線写真(A),胸部造影CT(B,C)及び気管支鏡下に行った穿刺細胞診(D)を次に示す.PET/CTでは胸腔内以外に異常を認めない.