硝子体出血は網膜や脈絡膜の病変によって出血した血液が硝子体に入り込んだ状態。
硝子体「が」出血しているわけではありません。出血の病変は網膜、脈絡膜を考えます。
さて、出血の原因ですが大きく分けて「新生血管によるもの」「外傷、裂孔によるもの」に分類されます。
出血部位 | 原因 | |
新生血管 | @網膜 | 糖尿病網膜症、網膜静脈分岐閉鎖症(BRVO)、網脈中心静脈閉塞症(CRVO) |
@脈絡膜 | 加齢黄斑変性 | |
正常血管 | 裂孔原性網膜剥離、網膜裂孔、外傷 |
外傷によるものは、説明は良いでしょう。
【101F15】
硝子体出血をきたすのはどれか.2つ選べ.
a 網膜裂孔
b 網膜色素変性
c 虚血性視神経症
d 網膜中心静脈閉塞症
e Vogt-小柳-原田症候群
目次
新生血管による硝子体出血
まずは網膜における新生血管が破綻して硝子体出血をきたす原因について考えていきましょう。
網膜における新生血管を生じる病気
網膜に新生血管を生じる原因には下記のものが有りました。
- 糖尿病網膜症
- 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)
- 網膜静脈分岐閉鎖症(BRVO)
これらには共通点が有ります。
「閉塞しているのは静脈である」点です。静脈が閉塞すれば新生血管を生じます。"静脈"と名がついているので理解しやすいですね。
- 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)
- 網膜静脈分岐閉鎖症(BRVO)
網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分岐閉鎖症(BRVO)も同じ病態なので合わせて記述しましょう。
なぜ静脈が閉塞するのか
網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分岐閉鎖症(BRVO)、糖尿病も病態は「動脈硬化」です。高血圧や糖尿病などのリスクがあるヒトなどでは「動脈硬化により静脈が閉鎖」してしまいます。眼の動静脈は交叉しており、その交差部で外膜を共有しています。動脈硬化を生じると低圧系の静脈が圧迫され狭窄化します。これを動静脈交叉現象といいます。
なぜ網膜新生血管が生じるのか
新生血管は長期間虚血状態が続くことで生じます。(通常3ヶ月から1年と言われています)網膜静脈領域では無血管帯となり、そこでは血管内皮増殖因子(VEGF)が生じ、網膜新生血管が生じるのです。この新生血管も突貫工事で作った血管であり、正常な血管ではないので破綻しやすく再出血をきたしやすいため硝子体出血を生じます。
急性発症の網膜動脈閉鎖症では硝子体出血は生じない
似たようなものですが、網膜動脈閉鎖症では硝子体出血が生じません。網膜静脈閉鎖症では動脈硬化による圧迫により無血管体が生じ、長期間虚血状態が続いた結果新生血管を生じるのでした。網膜動脈閉鎖症では「突然」閉塞が生じ急激に発症します。
急激に発症すれば、新生血管が生じる隙もありません。
脈絡膜に新生血管を生じる病気
加齢によって生じる原因不明の黄斑変性で、60歳以上に多く発生し、視力は0.1未満で中心暗点、変視症をきたす
加齢黄斑"変性"という疾患名ですが、その本態は脈絡膜における新生血管です。
重症例では、新生血管が網膜へ侵入し出血を起こします(硝子体出血)
治療法の一つにVEGF硝子体内注射(ベバシズマブ Bevacizumab)があることも加齢黄斑変性が新生血管を生じる疾患であることとリンクしますね。
コメント
医師国家試験では、硝子体出血の臨床問題は糖尿病網膜症か加齢黄斑変性症で、
60歳以下なら糖尿病網膜症、60歳以上なら加齢黄斑変性症、という裏技があります。
そんなにハッキリ分けられるんですね。そこまで分析してませんでした。いつも勉強になります。