高安動脈炎(大動脈炎症候群)は、大動脈とその主要分岐、肺動脈、冠動脈などの太い血管に好発する原因不明の血管炎。瘢痕化により二次的に狭窄・閉塞・拡張を生じ様々な症状を呈します。
高安動脈炎(大動脈炎症候群)の初期症状は発熱、全身倦怠感、易疲労感などの非特異的な症状で、20歳前後の若い女性に初発します。(アジア、中近東に多く、男女比は1:9)
特異的な診断マーカーが無いため、不明熱の鑑別の中で診断されてくることが多くあります。
臨床症状のうち、最も高頻度に認められるものは左上肢の乏血症状です(左鎖骨下動脈は右よりも血管病変を認める頻度が高い)。「左上肢の脈拍を触れない」「左上肢の血圧が右よりも低い(左右で著明な上肢血圧差あり)」などが特徴的であり、自覚症状としては左上肢のしびれ感、痛みなどを訴えることが多い。
また、難聴、耳鳴りもよく認められる症状でありこれは頸動脈の炎症・狭窄による症状です。
<高安動脈炎のエピソード>
21歳女性。1ヶ月前から全身倦怠感、発熱が持続していた。1週間前から左上肢のしびれ・疼痛を認め、3日前よりめまい、耳鳴りを自覚したため来院した。左上腕血圧 60/30 mmHg、右上腕血圧 110/74mmHg。左橈骨動脈で脈拍を触知しない。
高安動脈炎では約3分の1に大動脈弁閉鎖不全症の合併を認めます。大動脈弁閉鎖不全症が予後に大きな影響を与え、高安動脈炎の死因は心不全(最多)、脳梗塞・脳出血です。
腎動脈の血管炎により、狭窄を生じることがあり腎血管性高血圧につながります。(腎血管性高血圧の約20%
若い女性での(難治性)高血圧を見た場合に高安動脈炎(大動脈炎症候群)を考える必要があります。
確定診断はMRA、大動脈造影などにより罹患血管の狭窄・閉塞の有無を確認すること。
肺血管に病変がある場合は肺血流シンチグラムを施行し、肺動脈の狭窄・閉塞を確認する。
<左鎖骨下動脈の狭窄>
<右腎動脈に狭窄。右腎は腎血流低下により萎縮>
<症状まとめ>
病変部位 | 症状・理学所見 |
上行大動脈 | 大動脈弁閉鎖不全→心不全、狭心痛 |
総頸動脈 | 頭頸部への血流低下→上むいた時にめまい。耳鳴り、失神発作など
視力障害 |
鎖骨下動脈 | 上肢の血圧左右差、上下肢血圧差拡大 |
腎動脈 | 臍部の血管雑音(bruit)
腎動脈の狭窄→腎血管性高血圧、血漿レニン高値(高レニン性高血圧) |
皮膚病変として壊疽性膿皮症、結節性紅斑があります。
治療はステロイド治療が原則です。
高血圧に対してはACE-I、Ca拮抗薬、β-blockerを投与し、重症高血圧では外科的に狭窄血管の再建術を施行します。大動脈弁閉鎖不全に対しては大動脈弁置換術AVRなどを行います。