伝染性単核球症(IM)は、主にHerpes属のEBウイルス(EBV)がBリンパ球に感染することにより惹起される疾患。EBウイルスは一般には唾液を介して感染する。
伝染性単核球症では異型リンパ球を認めることが特徴です。ここでの、異型リンパ球は感染したBリンパ球を排除するために出現したキラーT細胞です。抗原刺激によって反応し幼弱なT細胞が形態変化し大型で単球様の核を呈します。
【伝染性単核球症の症状・所見】
- 弛張熱
- 頸部リンパ節腫脹(表面平滑、軟、無痛性、可動性良好)
- 咽頭炎・発赤
- 偽膜形成を伴う扁桃腫大(白苔あり)
- WBC↑(ウイルス感染ではあるが上昇)
- 異型リンパ球
- 肝脾腫(肝機能異常→ AST,ALT、LD↑)
- 皮疹(※アンピシリンなどの抗菌薬投与による)
- 肝脾腫、肝機能異常
- 異型リンパ球の出現
などがあります。試験では「発熱、咽頭炎、白苔を伴った扁桃腫大」で溶連菌感染を疑い、抗菌薬を投与したが症状は改善せず皮疹が生じたという病歴がポイントです。
確定診断にはEBV抗体価(VCA-IgM,VCA-IgG、EBNA抗体)を測定します。
VCA-IgM抗体 | 急性期に陽性に |
EBNA抗体 | 回復期に出現。既感染回復者で陽性 |
治療は安静・輸液などの対症療法で1ヶ月以内に完治し予後良好である。
伝染性単核症の重大な合併症として脾破裂があり、脾腫が治癒するまでは接触を伴う激しい運動を避けるように指導します。脾腫は発症後2〜3週間で最大になります
伝染性単核症 まとめ |
【特徴的な病歴】 「発熱、咽頭炎、白苔を伴った扁桃腫大」で溶連菌感染を疑い、抗菌薬を投与したが症状は改善せず皮疹が生じた |
【101G33】
12歳の女児.5日前からの38~39℃の発熱と咽頭痛とを主訴に来院した.咽頭は発赤し,扁桃は腫大し白苔の付着を認める.両側頸部に示指頭大から母指頭大のリンパ節を数個触知する.右肋骨弓下に肝を2cm,左肋骨弓下に脾を2cm触知する.血液所見:赤血球502万,Hb 12.6g/dL,Ht 43%,白血球14,000(桿状核好中球3%,分葉核好中球20%,単球3%,リンパ球57%,異型リンパ球17%),血小板21万.血清生化学所見:総ビリルビン0.8mg/dL,AST 120IU/L,ALT 140IU/L,LD 480IU/L(基準176~353).CRP 2.3mg/dL.
【103I72】※110A55もほぼ同じ問題
2歳の男児.白血球増多と血小板減少の精査のため入院した.4日前から38℃以上の発熱と下痢のため近医で治療を受けていた.症状は改善傾向にあった.意識は清明で活気がある.身長83cm,体重11.8kg.体温37.2℃.脈拍124/分,整.血圧100/56mmHg.頸部に径1cmのリンパ節を数個触知する.心音と呼吸音とに異常を認めない.右肋骨弓下に肝を4cm,左肋骨弓下に脾を3cm触知する.血液所見:赤血球443万,Hb 11.6g/dL,Ht 34%,白血球21,300,血小板9.6万.血液生化学所見:総蛋白5.8g/dL,アルブミン3.2g/dL,尿素窒素3.0mg/dL,クレアチニン0.2mg/dL,尿酸4.1mg/dL,総ビリルビン0.4mg/dL,AST 423IU/L,ALT 586IU/L,LD 1,059IU/L(基準260~530).CRP 0.9mg/dL.末梢血塗抹May-Giemsa染色標本を次に示す.
病原体として考えられるのはどれか.2つ選べ↓
EBV、CMV
【107A52】
19歳の男性.発熱とのどの痛みとを主訴に来院した.2日前から咽頭痛と39℃の発熱が出現し,市販の総合感冒薬を内服したが,症状が改善しなかった.意識は清明.体温38.2℃.脈拍92/分,整.血圧110/70mmHg.両側の頸部に圧痛を伴う径1.5cmのリンパ節をそれぞれ3個触知する.咽頭粘膜の発赤を認める.偽膜を伴う扁桃腫大を認める.呼吸音に異常を認めない.右肋骨弓下に肝を3cm,左肋骨弓下に脾を2cm触知する.血液所見:赤血球475万,Hb 15.2g/dL,Ht 45%,白血球16,000(分葉核好中球26%,好酸球3%,単球4%,リンパ球37%,異型リンパ球30%),血小板28万.血液生化学所見:総蛋白7.4g/dL,尿素窒素22mg/dL,総ビリルビン1.2mg/dL,AST 50IU/L,ALT 88IU/L.CRP 5.3mg/dL.
確定診断に最も有用な検査はどれか.↓
血清ウイルス抗体価測定
【106A45】
8歳の男児.発熱を主訴に来院した.1週前から39℃前後の発熱が持続していた.全身倦怠感,食欲不振および強い咽頭痛を伴うようになり,食事や水分が摂れなくなったため受診した.半年前に肺炎で入院し,アンピシリンによる治療を受けた際に,発疹が出現して治療薬を変更した既往がある.意識は清明.体温39.2℃.脈拍120/分,整.呼吸数24/分.両側の頸部に径2cmのリンパ節を3個触知する.リンパ節は表面平滑,軟で,圧痛なく可動性良好である.心音と呼吸音とに異常を認めない.腹部は平坦,軟で,右肋骨弓下に軟らかな肝を3cm,左肋骨弓下に脾を2cm触知する.皮膚緊張度の低下を認める.尿所見:蛋白(-),糖(-),潜血(-),沈渣に異常を認めない.血液所見:赤血球420万,Hb 12.8g/dL,Ht 39%,白血球12,800(好中球30%,好酸球1%,好塩基球1%,リンパ球56%,異型リンパ球12%),血小板18万.血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL,アルブミン3.8g/dL,尿素窒素20mg/dL,クレアチニン0.6mg/dL,総ビリルビン0.8mg/dL,AST 320IU/L,ALT 196IU/L,LD 650IU/L(基準277~580).咽頭の写真を次に示す.
初期治療として適切なのはどれか↓
輸液・安静
21歳の女性.弛張熱と咽頭痛とを主訴に来院した.両側口蓋扁桃は発赤,腫脹し,硬口蓋粘膜に点状の出血斑を認める.両側頸部に腫大したリンパ節を複数個触知する.体温38.2℃.白血球9,600(リンパ球60%,異型リンパ球20%).
この患者に投与すべきでない抗菌薬はどれか↓
ペニシリン系(アンピシリン)
【96H68】
EBウイルス感染で誤っているのはどれか.
a 成人の大部分は抗体陽性である.
b 主にTリンパ球に感染する.
c 咽頭炎を生じる.
d 肝脾腫がみられる.
e アンピシリンによって皮疹が生じる