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Ebstein病って?
Ebstein病は三尖弁の形成不全により、三尖弁閉鎖不全症(TR)を生じる疾患。
後尖と中隔尖が心尖部寄りに付着
三尖弁は右房と右室の間にある房室弁で、前尖、後尖、中隔尖の3つの弁から出来ています。Ebstein病では後尖と中隔尖が右室内に落ち込んで心尖部寄りに付着するため、収縮期に三尖弁がきっちり閉じられなくなります。(三尖弁閉鎖不全症TR)
右室は低位置に付着した後尖と中隔尖によって、
- 心尖部側の機能的右室
- 右房化右室
機能的右室は「肺動脈に血流を送り込むための本来の役割を果たしている右室」です。右房化右室は「右室の一部が右房として機能している」ことで、機能的右房の拡大とも言えます。簡単に言うと右室の一部が右房の手助けをしているということです。
三尖弁閉鎖不全を合併し、三尖弁が下方に位置しています。Ebstein奇形に特徴的です。
Ebstei病の症状
新生児の疾患ではない
Ebstein病は重症度の幅が非常に大きい疾患です。最も重症なケースでは新生児期に全身性のチアノーゼを呈し、心不全に陥り死亡します。軽症のケースでは、乳児期から学童期を無症状で過ごし、成人する頃になって全身性チアノーゼを呈し、徐々に心不全になります。40歳以降の生存例はそれほど多くはありません。
なぜ新生児で重篤化しやすい?
ではなぜ新生児で重篤化しやすいのでしょうか?胎児のときは母から酸素を受け取っています。その際、心臓から拍出された血流の殆ど(90%)は動脈管を通って、つまり肺を経由せずに大動脈に流れ込みます。これは肺血管抵抗が高いためです。出生後は直ちに肺呼吸し肺での酸素化を強いられますが、そうすぐには対応できないため、新生児期では肺血管抵抗が高いままです。繰り返しますが、新生児期は肺血管抵抗が大きいため全身性チアノーゼを呈しやすく容易に心不全に陥ります。しかし、生後1週間を過ぎると肺血管床の発達とともに、生理的に肺血管抵抗が減少に向かい肺血流量が増加し、チアノーゼは軽減します。新生児期に無症状だった軽いケースでは、乳児期以降も無症状で過ごすことが出来ますが、成人に近づくにつれ右室圧は再び上昇に向かい、再び肺血流が低下します。そうなると、新生児と同様に右房から左房へのシャントが増加し、チアノーゼを呈するようになります。
約70%に心房中隔欠損症または卵円孔開存の合併
収縮期に右室から右房に逆流した血液は、前述の通り新生児期には肺血管抵抗が高いこともあり心房中隔欠損または卵円孔を通って血液は左房へなだれ込みます。
全身性チアノーゼの原因には心房中隔欠損や卵円孔開存による右左シャントです
肺血流量が減少し、酸素化されていない血液が全身に駆出されるます。さらにEbstein奇形では機能的右室は右房化右室に奪い取られた分だけ収縮力が小さくなるので、高い肺血管抵抗に打ち勝て肺動脈に血液を送ることが出来ません。
約10%にWPW症候群を合併する
Ebstein奇形は刺激伝導系の形成にも異常が有り、しばしば不整脈の原因になります。不整脈をきたす心奇形として有名です。多くは上室性不整脈でその代表例としてWPW症候群があります。(その他、心房細動など)
Ebstein病の所見
三尖弁閉鎖不全症(TR)により収縮期逆流性雑音を聴取します。Ⅱpが減弱するため、Ⅱ音は単一に聞こえ、容量負荷・圧負荷を反映しⅢ音がⅣ音を聴取します(奔馬調律)
完全右脚ブロック(刺激伝導系の異常を示唆)、右房負荷所見(巨大P波)、WPW症候群(B型)
【93B24】
Ebstein病でみられるのはどれか.3つ選べ.
a 四部調律
b 肺血流量の増加
c 機能的右室の拡大
d 心房化右室
e 三尖弁中隔尖の偏位
【109I35】
房室弁の先天異常を伴う心疾患はどれか.2つ選べ.
a 総動脈幹症
b Ebstein奇形
c 心内膜床欠損症
d 心室中隔欠損症
e 完全大血管転位症
Ebstein病 |
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