肺炎の重症度分類A-DROP
A-DROPは日本独自の市中肺炎の重症度分類である。
A(Age 年齢) | 男性 >70歳, 女性 >75歳 |
D(Dehydration 脱水) | BUN >21 mg/dl または脱水あり |
R(Respiration 呼吸) | SpO2 <90%(PaO2 <60Torr) ※room air |
O(Orientation 見当識) | 意識障害あり |
P(Pressure 血圧) | SBP(収縮期血圧) < 90mmHg |
※ショックがある場合は1項目のみでも超重症(score 4 or 5に相当)
チェック項目の頭文字をとって、A-DROPで0~5 でスコアをつける。(スコアの評価は次項)
スコアの注意点
A-DROPは生命予後と相関のある5つの指標によって分類するが、いくつか注意点がある。まず※にあるように、ショックがある場合は超重症とすることである。当り前ではあるが、スコアが簡便になったぶん、数字だけ覚えていると間違ったスコアをつけてしまいかねない。
呼吸はroom airでの評価である
たとえば、SpO2 93%(リザーバー付きマスク 10l/min 酸素投与)の肺炎患者を評価するとき、SpO2は >90%だから"R"の項目は当てはまらない、としてはいけない。酸素投与をする状態 なら "R"の項目はチェックするのが妥当であると考える。あくまでroom airの評価ということである。
(参考)BUN上昇は脱水所見か?腎機能障害ではないか?
BUNが上昇していれば = 脱水なのか?それが誤っていることはご存じだろう。BUNは腎機能の評価に用いられ、基準範囲は <21 mg/dlである。腎機能障害時にも上昇するが、その際はCre(クレアチニン)も上昇する。一方で、BUNはCreと違い腎機能障害以外の原因でも上昇しうる。その代表が脱水だ。一応、参考程度に他にBUNの単独上昇(BUN/Cre比の上昇)をきたすものを上げるとたとえば、
- 脱水
- 消化管出血
- 高蛋白食
- 筋肉の異化
などがある。
肺炎の重症度分類するA-DROPにおいて、消化管の出血や腎機能障害を積極的に疑うというより、適切に脱水を診断できればよい。
BUNだけを見ていないか?Creは上昇していないか?もともと腎機能が悪くなかったか?
当り前ではあるが、Creの値と合わせて評価することが大切である。
A-DROPスコアによる判定
以前は項目が多く、煩雑であったがA-DROPはわかりやすく分類でき、スコアに応じて推奨される治療環境を判断できるようにしたことがA-DROPの大きな意義である。
0 | 外来治療 |
1 or 2 | 外来 or 入院 |
3 | 入院治療 |
4 or 5 | ICU治療 |
A-DROP関連の医師国家試験問題
<おさらい>
【107B39】成人市中肺炎患者の入院適応の決定に有用な指標はどれか.3つ選べ.
<臨床問題 良問>
【109G41】
84歳の女性.息苦しさと発熱とを主訴に家族に伴われて無床診療所に来院した.昨夜から元気がなかった.今朝から息苦しさと発熱とが出現したため受診した.5年前と2年前とに脳梗塞を発症し,要介護2と認定され訪問診療と訪問介護とを受けている.1日のほとんどを自宅内で過ごしており,排泄,入浴および着替えには一部介助が必要である.最近は食事のときにむせることが多くなった.体温38.6℃.脈拍104/分,整.血圧88/54mmHg.呼吸数22/分.SpO289%(room air).口腔内と皮膚とは乾燥し,右前胸部にcoarse cracklesを聴取する.
まず行うべき対応として正しいのはどれか.
肺炎は日本人の死因の第3位
肺炎は2011年に脳卒中を抜き、日本人の死因の第3位に躍り出た。肺炎による死亡者の95%は65歳以上である。肺炎は急に悪化することもあり、その重症度を測ることは臨床的に大変意義があることなのでしっかり判定できるようにしたいですね。