ALS(筋萎縮性側索硬化症)には陰性症状があります。
※ALS: amyotrophic lateral sclerosis
陰性症状とは見られにくい症状のことで、進行期のALSや家族性ALSには認められることがあります。注意してください。陰性症状の中でも見られにくい4大陰性症状と呼ばれるものがあります。
ALSの4大陰性症状
- 眼球運動障害
- 他覚的感覚障害
- 膀胱直腸障害
- 褥瘡
ALSはMotor neuron disease ともいわれ、上下運動ニューロン障害、球麻痺を呈し進行性の経過をとる疾患で通常3~5年の経過で人工呼吸器装着、または死に至る疾患です。
そのように考えれば、他覚的感覚障害、膀胱直腸障害は覚えやすいでしょう。
しかしながら、眼球運動障害は傷害されにくいのは特徴的です。
写真は、医療法人徳洲会を作った徳田虎雄さんです。ALSに罹患されていますが、眼球運動は保たれているので眼の動きでコミュニケーションを取っている様子です。
ALSは変性疾患で脊髄の前角・側索などが変性します。眼球運動にかかわるのはⅢ、Ⅳ、Ⅵなどの脳神経です。
脳神経の中でも、眼球運動にかかわる脳神経は核が脳幹の上部(中脳など)にあるので傷害されにくく、球麻痺(Ⅸ、Ⅹ、Ⅻ)は末梢神経と同じで障害されやすいと考えれば、整理しやすいかもしれません。
Ⅶ(顔面神経)は?
顔面神経も障害されます。(橋の運動核変性のため)
ALS患者の進行像・・・寝たきりで、眼球運動だけが保たれている(表情も変わらない)、やがて呼吸筋麻痺に陥る
他の陰性症状
ALSの4大陰性症状のほかにも見られにくい症状があります。
- 認知症
- 小脳症状
- 錐体外路症状
繰り返しますが、ALSは変性疾患で前角の障害で下位運動ニューロン障害がおき、側索の障害で上位運動ニューロンの障害、延髄の運動覚の変性で球麻痺が生じます。
したがって、大脳皮質や海馬が病態の首座である認知症や、小脳症状、大脳基底核が首座の錐体外路症状は陰性症状に含まれます。