まとめ |
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ベルリン定義は2012年に出来たARDSの診断基準である。従来の急性肺損傷(ALI: acute lung injury)の概念が廃止され、ARDSに統一されたのが大きな違いである。ALIはmild ARDSに相当し、従来ARDS とされていたところは moderate/sever ARDSに相当する。つまり、ARDSを細分化されたもので、診断・治療方針に活かそうというものである。
目次
ARDSの原因
ARDS 急性呼吸窮迫症候群の原因には様々な疾患が考えられる。大切なモノを抜粋すると
- 肺炎
- 誤嚥
- 敗血症
- 外傷(手術含む)
- 高度の熱傷
- 急性膵炎
- 輸血関連肺障害(TRALI)
などである。種々の原因により肺が傷害された結果、血管透過性の亢進をきたし急激に肺水腫にいたり、低酸素血症を呈する。ARDSの肺水腫は"非心原性肺水腫"と言われる。これは壊死物質の増加により、好中球、マクロファージが活性化し、中でも好中球から分泌されるエラスターゼが作用し、血管透過性が亢進した結果、肺水腫をきたしたからである。
原因はもちろん大事であるが迅速な呼吸管理が必要な病態であることを忘れないようにしたい。
消化器や心臓などの手術の中でも侵襲性の高い、言い換えれば輸血や大量輸液を伴う手術の後は、ARDSを発症した場合迅速に対応できるように集中治療室で管理される。
PF比によってARDSを分類する
ベルリン定義では、経過、酸素化、肺水腫、胸部X線によってARDSの診断・分類を行う。ARDSを mild/moderate/severe の3つに分けるのだが、その3つを分けるのは酸素化の項目である。
mild ARDS | moderate ARDS | severe ARDS | |
酸素化 PaO2/FiO2 | 200 ~300 | ≦ 200 | ≦ 100 |
治療の基本はPEEP & low volume
ARDSは酸素で助ける
前述のとおり、ARDSは呼吸管理が治療の中心であり、通常気管挿管を行う。ベルリン分類では先程のmild/moderate/severeの重症度分類にしたがって、治療の内容が記述されている。ここでは、どのレベルにおいても基本となるポイントを記述したい。ARDSの治療の基本方針としては
PEEPをかけること&一回換気量を少なくすること
PEEPをかけるのは「肺胞が虚脱しないように」である。透過性が亢進して水浸しになっている肺が呼気終末に完全に潰れてしまうと、虚脱してしまい膨らみにくくなる。一度完全にしぼんだ風船をふくらませるのに大きな力が必要なのと同様である。
一回換気量を少なくすることも忘れてはならない。
「酸素が足りていないのだから、換気量も多くすれば良いのではないか」
と思われるかもしれないが、ARDSの病態では肺胞内が水浸しものと、ガス交換が十分にできる元気な肺胞が混在している状態で、Airが入る余地のある肺胞の頭数が減少している。つまり全体の肺胞のキャパシティとしては減少している。この状態で、多くの換気を送ってしまうと、元気な残り少ない肺胞に相対的に大量の空気が流れ込みover volume をきたし、最悪気胸をきたしかねない。
「PEEPを掛けること&一回換気量をすくなくすること」、この基本を頭においたうえでベルリン定義での治療の詳細を確認するとよい。
(補足)ステロイドは無効
前述のとおり、好中球のエラスターゼなどが原因で血管透過性が亢進しARDSを呈することからステロイドは無効とされる。
(補足)エラスターゼ阻害薬も効果は疑問視されている
一部ではエラスターゼ阻害薬を使われているところがあるようだが、その効果は疑問視されている。
やはり、ARDSは呼吸管理が大切。
PEEP & low volume
まとめ(再掲) |
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