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クロイツフェルト・ヤコブ病について
クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease, CJD)はプリオン病の一種で、50~60歳の初老期に歩行障害、視覚障害、精神症状などで発症し、失調性歩行、亜急性に進行する認知症、四肢のミオクローヌスを呈する特徴的な疾患です。
急速進行性に認知症が増悪しますが、うつ狀態になるのは稀です。
さらに進行すると、無動性無言から除皮質硬直に進展し、ミオクローヌスも消失します。感染症などを合併し、発症から数ヶ月 or 1~2年で死亡します。
有効な治療法はありません。
経過概要
記銘力低下・自発性の低下
→進行性神経症状(ミオクローヌス。錐体路、錐体外路症状など)
→無動無言状態、除脳硬直
画像所見
頭部MRIでは大脳が進行性に萎縮していきます。
拡散強調像(DWI)で大脳皮質などに高信号を認めます。
クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob病)は進行すれば、誤診しようのない特徴的な疾患ですが、病初期の拡散強調像と症状(失調性歩行など)では脳梗塞と見分けがつかないことがあります。なおかつ、Common disease ではないため特徴的な所見や認知症の経過からクロイツフェルト・ヤコブ病を疑う姿勢が大切です。
引用 医師国家試験 107D42
画像を読む上での脳梗塞との鑑別点を考えてみましょう。
- 高信号域が両側性であること
- 血管支配領域に沿っていないこと(大脳皮質に沿って高信号)
【109I69】
75歳の女性.意識混濁のため搬入された.4ヵ月前から易怒性,興奮および不眠が出現し,健忘が急速に進行した.1ヵ月前から床上生活となり,幻視も出現して意思疎通が困難となった.昨日から意識が混濁し回復しないため救急搬送された.海外渡航歴,輸血歴および手術歴はない.意識レベルはJCSⅠ-3.開瞼しているが眼球は浮動しており,追視せず意思疎通は困難である.身長155cm,体重58kg.体温36.2℃.脈拍60/分,整.血圧112/68mmHg.呼吸数20/分.四肢に筋強剛を認め,両上肢と左下肢とにピクつくような素早い不随意運動を周期性に認める.腱反射は全般に亢進しているが,Babinski徴候は陰性である.尿所見,血液所見および血液生化学所見に異常を認めない.頭部MRIの拡散強調像を次に示す
引用 医師国家試験109I69
その他特徴的な検査所見
脳脊髄液中:14−3−3蛋白上昇
脳波:周期性同期性高振幅鋭波群(周期性同期性放電)
病理:脳萎縮、灰白質海綿状変性
クロイツフェルト・ヤコブ病の感染対策
感染源はスクレイピー(羊の脳症の原因)の羊の肉をエサとして食べたウシなどに広がり、海綿状脳症(狂牛病)や伝染性ミンク脳症などのようにプリオンタンパクを摂食することで連鎖的に感染します。従って狂牛病の肉を食べた人への感染のおそれがあります。(食物連鎖)。
日本でも24か月齢未満の牛の輸入が制限されるなどさまざまな対策が取られました。
感染しないもの・するもの
ウイルス感染症ではなく、プリオン病であるため感染経路は限られており、以下では感染しません。
- 性交渉
- 尿、便
- 入浴
- 唾液
では、感染のリスクが有るものは何でしょうか?
<CJD感染のリスクがあるもの>
- 神経組織
- 脳脊髄液
- 眼
これら以外では感染することは殆ど無く、日常生活における感染の危険性は極めて低い。
SDSによるプリオン蛋白不活性化
以前日本では脳外科手術の際の硬膜移植で汚染された輸入人硬膜を使用したことにより、医原性CJDが認められました。したがって、手術器具はできるだけディスポーザブルなものを使用し、破棄できない手術器具に関しては3%SDSによる煮沸消毒、アルカリ洗剤による洗浄が必要になります。
クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob病 CJD)まとめ |
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