代謝性アシドーシスでは、[HCO3]が減少しています。基準値 24mEq/l ですから、24より下回っているのところは、共通です。アシドーシスですから、pH↓も共通です。pH↓,HCO3↓ である場合に、高AG性代謝性アシドーシスなのか高Cl性代謝性アシドーシスなのか、わかるとよいですね。(後述するアニオンギャップの出番です)
pH↓ 、HCO3↓ ならば代謝性アシドーシス (ざっくり)
↓
高AG性? 高Cl性?
↓
AGを計算しよう!
まずは、高Cl性代謝性アシドーシスをみてみましょう。
高Cl性代謝性アシドーシスについて
何らかの原因でHCO3-が減少した場合、陰イオンの不足を補うためにCl-を増加させます。HCO3-の減少が契機になりアシドーシスをきたしたものが高Cl性代謝性アシドーシスです。例えば、わかりやすい例として下痢があります。

下痢ははHCO3を多く含む腸液の喪失が原因でした。HCO3が失われた結果、陰イオンの不足を補うためにClが補充されます。
AG(アニオンギャップ)ってどこかに出てきましたか?用語として、高Cl性代謝性アシドーシスのことを正常AG性代謝性アシドーシスとも言いますが、AGではなく、Clに着目して覚えられる点で高Cl性代謝性アシドーシスと呼ぶ方が良いのかなと個人的に思います。
実際に高Cl血症を呈していれば、例えば Cl 120 mEq/L の数値を見た時に高Cl性代謝性アシドーシスと想起されやすくなるでしょう。
高Cl性代謝性アシドーシスをきたす疾患
HCO3の減少には大きく分けて2パターンあります。喪失と分泌低下です。
喪失には、
- 腎臓での喪失(近位尿細管でのHCO3-の再吸収障害)
- 直接的なHCO3-の喪失
<腎臓での喪失>
- 近位尿細管アシドーシス
- Fanconi 症候群
- 原発性副甲状腺機能亢進症など
<直接的なHCO3-の喪失>
- 下痢
- 胆道ドレナージなど
高AG性代謝性アシドーシス
先ほどの高Cl性代謝性アシドーシスとどう違うのでしょうか。
血中の不揮発酸の増加がスタート
高AG性代謝性アシドーシスは、血中の酸の増加が原因です。そのまま不揮発酸が増えたからアシドーシスに傾くのです。
(先ほどの、高Cl性代謝性アシドーシスは何がスタートでしたか?HCO3の減少でしたね。)
高AG性代謝性アシドーシスでは、血中に酸が放出します。仮にその酸をHAとすると
HA ↔ H+ + A-
と血中では解離します。緩衝作用でHCO3-が消耗されます。
H+ + A- + HCO3- → H2CO3- + A-
ということは、血中に不揮発酸HAが放出されればされるほど、HCO3- は消耗されA-は増加することになります。A-は陰イオン(anionのA)ですので、HCO3-担っていた電荷をClで補正する必要はないんですね。ちなみにアニオンギャップとはanion(陰イオン)のギャップです。簡略化して書くと
AG = Na+-Cl--HCO3-
代謝性アシドーシスなのですから、前提としてHCO3-は低下しているはずです。ですので、AGが上昇しているということはClが不変を示唆します。
AGを計算する
pH↓,HCO3↓ である場合に高AG性代謝性アシドーシスなのか高Cl性代謝性アシドーシスなのか、その鑑別点にAGが使えます。ちなみにAGの基準値は12±2ですので 12とおぼえましょう。
代謝性アシドーシス かつアニオンギャップ増加
→HCO3-の低下 かつClは不変
→ Cl、HCO3-以外の陰イオンの増加
→ 不揮発酸の増加を示唆
比較
簡単に対比して終わりにしましょう。
高AG性 | 高Cl性 | |
スタート地点 | 不揮発酸増加 | HCO3-の喪失 |
疾患 |
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