ANCA関連血管炎の鑑別。顕微鏡的多発血管炎(MPA)と好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)を中心に!

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ANCA関連血管炎とは、血管炎症候群のうちANCA(抗好中球細胞質抗体)が陽性であるものである。ANCA関連血管炎には

  1. MPA 顕微鏡的多発血管炎
  2. EGPA 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症<旧: Churg-Strauss症候群>
  3. GPA 多発血管炎性肉芽腫症<旧: Wegener肉芽腫症>

の3つがある。

ANCA関連血管炎を比較してみよう!

MPA EGPA GPA
和名 顕微鏡的多発血管炎 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 多発血管炎性肉芽腫症
好発年齢 50 ~ 70歳(高齢者) 10〜60代の成人(幅広い年齢層)  30〜50代の中高年
 背景  高齢者の不明熱

尿路感染症や腎機能障害として治療されていたが...

喘息 or アレルギー性鼻炎 必発

(アレルギー素因)

 難治性鼻炎、副鼻腔炎
ANCA MPO-ANCA(P-ANCA) MPO-ANCA が多い PR3-ANCA(C-ANCA)
 鑑別点 好酸球は増加しない

腎障害(急速進行性糸球体腎炎)

肺症状(肺胞出血、間質性肺炎)

 好酸球 ↑↑

IgE↑

腎障害はきたしにくい

 鼻(上気道)に基礎疾患

ハナハジメ(鼻→肺→腎)

 病理  <腎所見>

フィブリノイド壊死と細胞性半月体

 少血管周囲に好酸球浸潤を伴う壊死性血管炎と肉芽腫  鼻粘膜生検で巨細胞を伴う壊死性血管炎と肉芽腫
 腎症状 急速進行性糸球体腎炎 腎症状はきたしにくい  急速進行性糸球体腎炎(腎不全に至りやすい)

医師国家試験的には

MPO-ANCA(+) PR3-ANCA(+)
MPA 顕微鏡的多発血管炎

もしくは

EGPA 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

GPA 多発血管炎性肉芽腫症
えさきち
このページでは、MPO-ANCA陽性であるMPA顕微鏡的多発血管炎とEGPA好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の2疾患の鑑別点を見ていきます!
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血管炎による症状

えさきち
ANCA関連血管炎は膠原病の一種ですから、発熱などの症状の経過が長いことが特徴です!
くみちょう
不明熱を見たら感染症、悪性腫瘍、膠原病がまず鑑別に挙がったね!
えさきち
血管炎による症状は非特異的で広い範囲に症状が認められます。

非特異的な全身症状として発熱(38~39℃)、全身倦怠感、体重減少などがあげられる。その他、臓器症状として紫斑、消化管出血、多発単神経炎、多関節炎などが挙げられる。

えさきち
症状だけでは非特異的なものが多いですが、多発単神経炎は要checkです!

ANCA関連血管炎それぞれの特徴や鑑別点

MPA 顕微鏡的多発血管炎

MPAは高齢者!

ざっくりこれくらいで良いかもしれない。MPAは高齢者の不明熱で紹介されるケースが多い。

急速進行性糸球体腎炎を呈する

数週から〜数ヶ月の単位で進行するのが急速進行性糸球体腎炎。

MPAの国家試験108D33

76歳の女性

両下肢のしびれ感を主訴に来院した.5週前に両足先のしびれ感を自覚し,その後しびれ感は徐々に上行した.3週前から37℃台の発熱,10日前から両足に紫斑が出現した.5日前からは歩行困難を自覚したため受診した.体温37.2℃.脈拍76/分,整.血圧148/88mmHg.眼瞼結膜は貧血様である.心音と呼吸音とに異常を認めない.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.両側の膝下から足先までの痛覚と触覚の低下,両側の足の振動覚と位置覚の低下を認める.徒手筋力テストで右足関節の背屈は2,底屈は4,左足関節の背屈は3,底屈は4と低下している.両側の膝蓋腱反射とアキレス腱反射は消失している.病的反射はない.尿所見:蛋白2+,潜血2+,沈渣に赤血球円柱1~4/1視野.血液所見:赤血球318万,Hb 10.1g/dL,Ht 31%,白血球9,980(分葉核好中球49%,好酸球5%,単球6%,リンパ球40%),血小板21万.血液生化学所見:総蛋白7.4g/dL,アルブミン3.2g/dL,IgG 1,980mg/dL(基準960~1,960),IgA 297mg/dL(基準110~410),IgM 113mg/dL(基準65~350),AST 28IU/L,ALT 16IU/L,LD 177IU/L(基準176~353),CK 27IU/L(基準30~140),尿素窒素21mg/dL,クレアチニン1.1mg/dL,Na 135mEq/L,K 4.4mEq/L,Cl 98mEq/L.CRP 2.9mg/dL.下肢の写真を次に示す

108d033

108d033

check すべきポイント

  • 76歳と高齢者
  • 5週間前からしびれ、徐々に進行
  • 体温 37.2℃
  • 紫斑あり
  • 腎機能障害あり(以前の事は書かれてないが5週間前から進行してると考えると急速進行性糸球体腎炎に合致)
  • 好酸球 正常範囲

104I63

65歳の女性労作時呼吸困難,発熱および体重減少を主訴に来院した.半年前から空咳があり,階段を昇るときに息切れを自覚していた.1ヵ月前から38℃を超える発熱が持続し,抗菌薬を服用したが軽快しなかった.体重が1ヵ月で2kg減少した.最近,関節痛や筋肉痛も自覚するようになった.朝のこわばりはない.心音と呼吸音とに異常を認めない.関節腫脹と筋力低下とを認めない.尿所見:蛋白2+,潜血3+.血液所見:赤血球317万,Hb 9.5g/dL,Ht 26%,白血球12,500,血小板55万.血液生化学所見:クレアチニン 2.4mg/dL,CK 70IU/L(基準30~140).免疫学所見:CRP 14.5mg/dL,リウマトイド因子〈RF〉陽性.

決定打に乏しい所見だが、高齢者で筋肉痛・関節痛・リウマトイド因子陽性など膠原病らしき症状が見られ、肺症状(空咳、労作時呼吸困難) + 腎障害(尿蛋白陽性、尿潜血陽性)が同時に発症していることより顕微鏡的多発血管炎を疑う。

皮膚筋炎では筋肉痛はあるものの、筋力低下は認めない

99A35 半月体形成性糸球体腎炎

65歳の男性.感冒症状のため近医を受診したところ,蛋白尿を指摘され精査のため来院した.尿所見:蛋白3+,糖(-),潜血2+,沈渣に赤血球10~20/1視野,白血球3~5/1視野.血液所見:赤血球400万,Hb 13.0g/dL,Ht 39%.血清生化学所見:空腹時血糖90mg/dL,総蛋白6.4g/dL,アルブミン4.0g/dL,尿素窒素32mg/dL,クレアチニン4.0mg/dL,尿酸8.0mg/dL,総コレステロール200mg/dL.腹部超音波検査で腎臓の萎縮を認めない.腎生検の光顕PAS染色標本を次に示す.

99a035

99a035 半月体形成性糸球体腎炎

  • 65歳と比較的高齢であること
  • 腎不全はあるものの腎の萎縮がない(慢性腎不全は否定的)
  • 貧血、ネフローゼ症候群は呈していない
  • 断定では出来ないが急速進行性糸球体腎炎

EGPA 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

喘息などのアレルギー既往が100%

EGPAはアレルギー素因があり喘息もしくはアレルギー鼻炎などのアレルギー既往があることが重要。

血液所見で好酸球増加、IgE高値

これもI型アレルギーの素因があることを示唆する。

102I65 EGPAの症例

32歳の女性.両下肢の筋肉痛としびれ感とを主訴に来院した.2週前から両下肢の症状が出現し,徐々に悪化した.2年前から気管支喘息と診断され治療中である.体温37.2℃.脈拍72/分,整.血圧110/64mmHg.胸部背面で軽度のwheezesを聴取し,下肢の筋力低下と下腿の感覚低下とを認める.血液所見:赤沈32mm/1時間,白血球12,400(桿状核好中球2%,分葉核好中球40%,好酸球29%,好塩基球1%,単球5%,リンパ球23%),血小板44万.血液生化学所見:IgE 786IU/mL(基準250未満),尿素窒素9.2mg/dL,クレアチニン0.8mg/dL,AST 22IU/L,ALT 18IU/L,CK 56IU/L(基準40~200).CRP 4.2mg/dL.

MPA 顕微鏡的多発血管炎と所々比較しながら見ていこう!

<keywords>
  • 32歳女性(MPAのような高齢者ではない)
  • 筋肉痛、しびれ出現、筋力低下を伴う(多発単神経炎)
  • 2年前気管支喘息に罹患
  • 好酸球、IgE高値
  • 腎機能障害は認めない(尿素窒素9.2mg/dL,クレアチニン0.8mg/dL)

108I44

52歳の男性.持続する喘鳴,手足のしびれ感および発熱を主訴に来院した.2年前から喘鳴が出現し,気管支喘息と診断され自宅近くの診療所で治療を継続している.3ヵ月前から四肢のしびれ感が出現した.四肢のしびれ感が増強するとともに2週前から発熱を繰り返すようになったため紹介入院となった.喫煙歴はない.ペットは飼育していない.粉塵吸引歴はない.体温38.6℃.脈拍112/分,整.血圧140/90mmHg.呼吸数24/分.四肢末梢に軽度の表在・深部感覚の低下を認める.尿所見:蛋白(-),糖(-),ケトン体(-),潜血(-),沈渣に白血球を認めない.血液所見:赤血球488万,Hb 14.1g/dL,Ht 42%,白血球17,600(桿状核好中球2%,分葉核好中球53%,好酸球30%,好塩基球1%,単球1%,リンパ球13%),血小板28万.血液生化学所見:総蛋白6.7g/dL,アルブミン3.9g/dL,クレアチニン0.7mg/dL,Na 139mEq/L,K 4.2mEq/L,Cl 101mEq/L.免疫血清学所見:CRP 12mg/dL,β-D-グルカン3.3pg/mL(基準10以下),抗好中球細胞質抗体PR3-ANCA 10EU/mL未満(基準10未満),MPO-ANCA 90EU/mL(基準20未満),IgE 2,180IU/mL(基準250未満).動脈血ガス分析(鼻カニューラ3L/分 酸素投与下):pH 7.37,PaCO45Torr,HCO3- 25 mEq/L

<keywords>
  • 52歳男性(MPAのような高齢者ではない)
  • 2年前気管支喘息に罹患
  • 好酸球、IgE高値
  • 腎機能障害は認めない(尿蛋白陰性、尿潜血陰性、クレアチニン0.7mg/dL)
  • MPO-ANCA高値

MPAとEGPAの鑑別点まとめ

医師国家試験的にはMPO-ANCA高値ならばMPA顕微鏡的多発血管炎、EGPA 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症のどちらかなので

血管炎の非特異的な症状(持続する発熱、倦怠感)や筋肉痛、筋力低下、感覚低下、しびれなどの多発単神経炎の症状に加え、下記のような鑑別点で見分けていく。

MPA EGPA
高齢者

急速進行性糸球体腎炎

肺症状(肺胞出血、間質性肺炎)

喘息もしくはアレルギー性鼻炎の先行

好酸球↑↑

IgE ↑

最後に...ANCA陰性≠ANCA関連血管炎 とは限らない

ANCAは特徴的であるが、全ての症例でANCAが陽性になるわけではない。

EGPA 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症<旧: Churg-Strauss症候群>においては約50% がMPO-ANCA陽性になる。

PR3-ANCAは、GPA 多発血管炎性肉芽腫症に特徴的であるが、MPAやEGPAも鑑別にはあがる。

特発性半月体形成性腎炎でもANCAは検出されるがこれはMPA顕微鏡的多発血管炎の人限局型と捉えると考えやすい。

治療はステロイド+シクロフォスファミド

ステロイド投与する。治療抵抗例、重症例では免疫抑制剤(シクロフォスファミドなど)をする。

【109I76】
60歳の女性.呼吸困難を主訴に来院した.3週前から乾性咳嗽が,2週前から血痰が出現した.昨日から38℃台の発熱と呼吸困難とを生じたため受診した.意識は清明.身長150cm,体重48kg.体温37.4℃.脈拍92/分,整.血圧124/86mmHg.呼吸数24/分.SpO2 90%(room air).眼瞼結膜は貧血様である.心尖部にⅡ/Ⅵの汎〈全〉収縮期雑音を聴取する.右胸部と右背部とにfine cracklesを聴取する.尿所見:比重1.011,蛋白1+,潜血2+.血液所見:赤血球280万,Hb 8.2g/dL,Ht 28%,白血球13,600(桿状核好中球10%,分葉核好中球81%,好酸球1%,単球3%,リンパ球5%),血小板36万.血液生化学所見:アルブミン3.3g/dL,AST 50IU/L,ALT 30IU/L,LD 710IU/L(基準176~353),尿素窒素16mg/dL,クレアチニン0.6mg/dL.免疫血清学所見:CRP 16mg/dL抗核抗体160倍(基準20以下),MPO-ANCA 300EU/mL(基準20未満).胸部CTを次に示す.

109i076
治療として適切なのはどれか.2つ選べ.
a フロセミド
b ニトログリセリン
c シクロホスファミド
d 副腎皮質ステロイド
e サラゾスルファピリジン

正答
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