梅毒と血清梅毒反応診断について(STS、TPHA、FTA-ABS)

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梅毒(syphilis)は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)による感染症。

(スピロヘータのトレポネーマ属)

梅毒と血清学的検査の特徴

感染経路には性交、経胎盤(先天性梅毒)があります。梅毒の診断は困難なものです。その理由は病原体を培養できないからです。培養できませんから、血清学的診断が診断に頼らざるを得ません。しかし、その血清学的検査も完璧ではなく解釈が難しいものです。

血清梅毒反応には一般にSTS、TPHAが診断に用いられ、FTA-ABSは最終確認に用いられます。

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STSについて

STS:serologic test for syphilis

STSはカルジオリピン(CL)を抗原に使用して抗CL抗体を検出する方法です。CLは梅毒トレポネーマと交差抗原性はありますが、梅毒トレポネーマそのものではありません(非特異的脂質抗原)。したがって偽陽性がありえます。具体例ではSLE(全身性エリテマトーデス)や抗リン脂質抗体症候群(APS)や妊娠で陽性を示すことがあります。(生物学的偽陽性BFP)

BFP:biological false positive

他には、Hansen病、妊娠後、麻疹、水痘などで偽陽性になります。

えさきち
SLEをまず覚えましょう

STSは感染後約1ヶ月で陽性になります(逆に言えば、感染しても約1ヶ月はそのままです)

STSは偽陽性があることは欠点ですが、感染の約1ヶ月後から上昇すること、梅毒の病勢と一致して抗体価が鋭敏に変動することなどから古くから使用されています。また、治癒するとSTSは陰転化し、治療効果の目安になります。

TPHAについて

TPHA:Treponema pallidum hemagglutination test

一方、TPHAは梅毒トレポネーマの菌体成分そのものを抗原に使用するので梅毒に対する感度特異度は高いことが特徴です。破壊した菌体成分をヒツジの赤血球に吸着させ、これを被験者の血清と反応させます。血清中に抗トレポネーマ抗体があればヒツジ赤血球を凝集させます。

梅毒感染に際して、TPHA抗体のほうが力価が上昇するのが遅く(STSよりも約2週間遅れる)かつ治癒後の消失が遅い(治癒後も長期間残る)傾向がある。

最終確認としてFTA-ABS法が用いられます。TPHAと同様に梅毒スピロヘータを抗原とし、治癒後も長期間残ります。

比較してみるSTS、TPHA

STS TPHA
抗原 抗カルジオリピン抗体を検出

(リン脂質抗原法)

梅毒トレポネーマの菌体を抗原を検出
特徴 感染の際はまずSTSが上昇する

偽陽性が多い(SLE、妊娠)

病勢に一致する

治癒後は陰転化する

STSに次いで上昇する

感度・特異度が高い

治癒後も長期間残る

検査所見の解釈

STS(-)かつTPHA(-)の場合

未感染、または感染後1ヶ月以内(STSが上昇していない)

STS(+)かつTPHA(-)の場合

梅毒に感染するとまずSTSが上昇し、次いでTPHAが上昇します。したがって感染初期にはSTS(+),TPHA(-)の所見が得られる可能性はあります。また前述の通りSTSは偽陽性も多いので、妊婦さんであれば妊娠による偽陽性と解釈できます。

STS(+)かつTPHA(+)の場合

活動性の慢性梅毒感染である可能性が高いと解釈できます。

STS(-)かつTPHA(+)の場合

STSは治癒後陰転化し、TPHAは長期間残ることから梅毒の治癒後である可能性が高いと解釈できます。しかし、30年以上に渡って梅毒に罹患していると未治療でもSTSは低下することがあり、年齢や病歴によっては慢性の梅毒感染の可能性も残ります。

梅毒まとめ
  • 梅毒は梅毒トレポネーマによる感染症
  • 血清梅毒反応の解釈が難しく梅毒の診断は困難
  • STSはカルジオリピンを抗原に用いる
  • TPHAとFTA-ABS方は梅毒トレポネーマを抗原に用いる
  • STSは偽陽性が多い(SLE、APS、妊娠)
  • STSは病勢を反映し、治癒後は陰転化
  • TPHAは治癒後も長期間陽性
  • 梅毒感染の際にはSTSが先に上昇し、次いでTPHAが上昇する
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